STORIA(ストーリア)法律事務所インタビュー

STORIA法律事務所

日弁連の統計情報によると全国に法律事務所は17,000以上あるとされています。

出典:基礎的な統計情報(2020年)
https://www.nichibenren.or.jp/document/statistics/fundamental_statistics2020.html

これまで、弁護士の先生方にフォーカスを当ててインタビューを実施してきましたが、法律事務所にもフォーカスをあてて、法律事務所を創業した時の思いや、苦労話を通じて生々しい歴史とこれからの未来展望について語っていただき、各法律事務所の個性や強みを伝えたいと考え、法律事務所インタビューを企画しました。

リサーチを進めていく中で特に際立って、我々が選んでインタビューしたい!と感じた法律事務所にお願いをしています。今回は、ITやAIなどの先端法務に強いSTORIA(ストーリア)法律事務所にインタビューを実施しました。共同代表の柿沼弁護士と杉浦弁護士に事務所設立の経緯やこれからのことについてお伺いしました。

柿沼太一 弁護士

柿沼 太一

1997年3月:京都大学法学部卒業
2000年4月:司法修習修了(52期)弁護士登録(東京弁護士会)関東法律事務所入所
2002年11月:兵庫県弁護士会に登録替
2011年:中小企業診断士登録
2015年3月:STORIA法律事務所立ち上げ
2017年12月:経済産業省AI・データ契約ガイドライン検討委員会委員就任

杉浦健二 弁護士

杉浦 健二

2000年:関西大学社会学部・マスコミュニケーション学専攻卒業
2000年:一般企業入社 管理会計業務、広告マーケティング等に従事
2007年:弁護士登録(60期・兵庫県弁護士会)
2015年:STORIA法律事務所設立(神戸市)
2017年:STORIA法律事務所東京オフィス設立、第一東京弁護士会に登録替え

STORIA法律事務所 創業までの道のりについて

お互いの第一印象はどうでしたか?

-柿沼弁護士

初対面は私が所属していた弁護士事務所に杉浦弁護士が新人として入所された2007年。彼は既に社会人経験があった為か、失礼な言い方ですが、フレッシュ感はなかったですね(笑)。実は、今の事務所を立ち上げるまで、同じ事務所に所属してはいたのですが、その間、同じ案件で一緒に仕事をしたことは1度か2度しかなかったのですが、エネルギーがあって、枠にとらわれずチャレンジ精神を持っている方だなと思いました。

-杉浦弁護士

柿沼弁護士の第一印象は「真面目できちんとされた方だなあ」でした。その印象は今でも変わりませんが、お酒が入ると普段では見られない姿を目にすることがあって(笑)、そのギャップをいつも楽しみにしていました。あとは行動力がある方だなあと。思いついたらその場ですぐに連絡してアポを取っているところなど、素晴らしいなあと思っていました。

どうして共同代表としてお互いを選んだのですか?

-柿沼弁護士

独立を考えた時、1人でやるのか、複数でやるのか悩みました。結論としては複数で立ち上げた方が面白そうだなと。では誰と一緒にやるか?ですが、0から一緒に法律事務所を始めるとなると、単に「仕事ができる人」というだけでは足りなくて、共にリスクを背負ってくれる方、信頼できる方でないといけない。そういった意味で信頼の置けるのが杉浦弁護士でした。

また、大人しい人と組むことで、私だけの意向で何でも一方的に決めてしまう組織にはしたくなかったので、自ら新しい道を切り開く気概と能力がある杉浦弁護士と一緒にやることで相乗効果をもたらすことができるのではないかと考え、声を掛けました。

-杉浦弁護士

弁護士になる前は、民間企業で管理会計業務に従事していました。その後に司法試験を受けて弁護士になり、はじめに入所した事務所で柿沼弁護士と出会いました。弁護士登録して5年ほど経ったころから、他事務所の方から「一緒にやらないか」と声を掛けられる機会が増えるようになり、それで、はじめて独立を意識するようになりました。もともと自分でいちから作るのが好きな性格だったので、どうせやるなら、既にある他事務所にお世話になるよりも、一人で独立して事務所をはじめるのが性に合っているかな、と考えていたところ、柿沼弁護士から「一人でイチからやるんだったら、一緒にイチからやらない?」とお声がけいただき、では是非一緒に!となりました。

柿沼弁護士と一緒にSTORIAを始めることができて、本当に良かったと思っています。

STORIA法律事務所について

事務所名に込めた思い

依頼者の方と一緒に、依頼者の方の物語を作っていきたいという思いがありました。一度だけの機会だけではなく、どうせならば長くお付き合いしながら伴走して、その方やその企業の物語を作る事務所でありたいと。

事務所名については沢山候補が挙がりました、100個くらい案を出した記憶があります。キーワードは「依頼者との物語」だったので、物語に関連する様々な言語を調べて。「STORY法律事務所」のほかに「イストリア法律事務所」「ヒストリア法律事務所」、または直球に「ものがたり法律事務所」もありました。そのなかで一番しっくりきたのがイタリア語の「STORIA(ストーリア)」でした。柿沼さんの得意料理がイタリア料理だったというのも理由です(若干後付けですが)。

そのような経緯で2015年3月に設立したSTORIA法律事務所ですが、6年経った現在も、企業を中心に様々な依頼者の方とお付き合いさせていただいており、顧問先の中には大きく成長した企業も増えており、「依頼者と一緒に依頼者の物語を作る」と掲げたことは間違っていなかったと考えています。

9つのミッション

事務所設立時に、メンバーで協議して以下の9つのミッションを決めました。元々は、個人のお客様も対象として想定していたこともあり、その名残が入っていますが、これらのミッションは企業のお客様に対しても変わらずあてはまるものだと考えています。6年経った今でも変更はしておらず、これからも維持していきたいと考えています。

事務所設立から今日まで

山あり谷ありでしたが、総じて人に恵まれ続けた6年半でした。

弁護士3名、スタッフ2名の計5名でSTORIA法律事務所はスタートしたのですが、現在では弁護士9名、スタッフ5名に増えました。幸いにも設立当初から大型案件のご依頼をいただく機会にも恵まれたことや、大幅な拡大志向もなかったため、経済的にはある程度安定しつつ、着実に一歩ずつ成長してきたイメージがあります。

設立当初は、個人のお客様と企業のお客様が半々ぐらいだったのですが、現在は9割以上が企業のお客様、それもITやデータ、AIなどの業種の企業がほとんどを占めるようになりました。設立後にこれらの分野に関するご相談をよくいただいたことや、もともと我々がこれらのビジネスに興味を持っていたことがきっかけになったと思います。

メンバーが増えることでの変化

企業文化というか、事務所文化は大事にしています。STORIAは、楽しく仕事をして困ったらメンバー間で助け合うスタンスを大事にしています。アソシエイト弁護士にも「絶対にこのやり方でやれ」みたいなことは言ったことはなく、一緒に案件を進めながら、アソシエイトの考え方も尊重して、とはいえ指摘すべきことは躊躇せず伝える方針で業務をしています。「依頼者と一緒に物語を作る」仕事をするためには、まずは我々事務所メンバー同士の物語を作ることが大事だと思っています。そのためにも、事務所メンバー間のコミュニケーションの質と量は重要だと思っており、所内チャットでは絶え間なくメッセージが飛び交っている状況です。

また、週に1回、弁護士全員が参加する所内勉強会を開催しています。最新の法令知識のアップデートや、悩んだ事案の共有、近日登壇予定のセミナーのリハーサルをして他のメンバーから改善点の指摘を受けるなどしており、所内勉強会は貴重なインプットとアウトプットそれぞれの機会として機能していると思っています。

さきほども触れましたが、事務所としては急拡大を目指すことはせず、いまいるメンバーを大事にしようというスタンスで取り組んでいます。そのようなスタンスの下、良い人材と出会い、一緒に仕事をしたいと思える仲間が徐々に増えていった結果、結果的に弁護士が6人増えたことになります。

あとSTORIAの特色としては、弁護士法人の財務情報を所属弁護士にすべてオープンにしていることです。月に1回実施する弁護士会議で、人事以外の経営情報はすべて事務所弁護士メンバーに開示しています。自分たちがアソシエイトだったら、きっと気になるであろう情報は伝えておいたほうがよいだろうと考えたからです。また、事務スタッフを含めた全員で、年に1回合宿をしており、昨年度の振り返りと新年度の計画を皆で共有しています。

STORIA法律事務所の強み

弁護士業務の進め方として、原則として、パートナー弁護士とアソシエイト弁護士がチームを組んで案件に取り組むようにしています。1人1人が独立して仕事を行うのではなく、知識やノウハウをなるべく事務所で共有し、事務所としての総合力を高めることを大切にしています。所内勉強会もこの一環です。

うちの事務所の強みとして、目に見える部分で言うとAIやIT、データや個人情報ということになります。

ただ、実は目に見えない部分としては、躊躇なく新しい領域に挑んでいき、継続的かつ貪欲に知識・情報をアップデートしていく文化を持つ集団であることが、弊所の最も大きな強みだと思っています。

もちろん新しい領域に挑むには多くのエネルギーが必要です。そのエネルギーをメンバー全員が持っていて、出し惜しみしないことは「STORIA法律事務所」らしさかもしれません。

事務所としては、IT・AI/データ法務やオンラインビジネス法務が強みだと思っていますが、事務所の誰かがそれとは異なる新しい分野をやりたいと言ったら、全力でサポートしています。パートナーの得意分野にならう必要は全くなく、アソシエイトが自ら新しい領域を見つけてチャレンジしてくれることを大歓迎していますし、実際にそのような例が出てきています。大変嬉しいことです。各メンバーが、1人の弁護士として成長することを支援できる事務所であることは重要であると考えています。

事務所Webサイトでの情報発信

柿沼も杉浦も、STORIAを設立する前から、個人的にブログやSNSで発信していたこともあって、STORIAのウェブサイトを作る際、事務所ブログを設置して情報発信することは自然な流れでした。ブログでは、同業の先生などの法律専門家に向けたブログというよりは、専門家から見た独自の視点が、一般の方にも伝わりやすいコンテンツにしようと考えて書いています。

Webサイトで情報を発信するメリットは様々ありますが、そのひとつに「お客様とのミスマッチを防げる」点が挙げられます。最低限の情報しかない事務所サイトでは、どういった法律事務所なのか、誰がいるのか、取扱分野は、といった基礎的な情報しか伝わりづらく、個々の弁護士の考え方やスタンスまでをわかっていただくことは難しいと考えています。ブログでは、作成した弁護士の知識のみならず、仕事への取り組み方などまで現れるものだと思っています。

現在は我々2名のみならず、アソシエイト弁護士も事務所ブログを書いていますが、答えが出ていない論点や問題に切り込む姿勢を大切にしてもらっています。法律事務所なので、無難な内容にしておいた方が安心かもしれないのですが(笑)、せっかく発信する以上は、見解が分かれたりするトピック、まだ他の方が書いていないようなトピックの方が面白いと思っています。

このような分野を書こうとする場合、必然的に書き手の性格やスタンスが行間からも溢れやすく、このような弁護士に相談したいと思ってくれる方に問い合わせを頂けることが多いです。逆にブログを通して我々を自己開示することで、「合わないな」と感じられる方からはお問い合わせをいただけないことになりますが、それはそれで良い、むしろお互いのためにそうあるべきと考えています。

これからのSTORIA法律事務所について

リーガルテック(法律×IT技術)の未来

弁護士業界にとって、リーガルテックは脅威ではなく、共生すべき存在であり、どんどん使っていくべきだと思っています。法律書検索や、契約書の最低限のリーガルチェックをしてくれるツールを賢く利用することで、案件の細かな分析や依頼者との打ち合わせなど、人間である弁護士でしかできない業務をするための時間に充てることができます。

もっとも、リーガルテック時代において、新人弁護士の育成は悩ましい問題だと考えています。リーガルテックを使うことで、契約書をリーガルチェックするための基礎的なスキルを身に着けていない段階でも、ある程度のクオリティがあるようにみえる成果物を作成できてしまいます。しかし、実際には細かな点を突っ込まれたら答えられなかったり、そもそも当該事件との関係では誤った回答になっていたりしても、それに気付けないことも出てきかねません。なので、新人弁護士の方は、「リーガルテックがあるから大丈夫」と考えるのではなく、あくまで自分の力で行える業務を効率的に処理するために、リーガルテックを用いるのだというスタンスを大事にしていただきたいな、と考えています。

とはいえ、リーガルテックの発展が業務の効率化に与える影響が大きいことは間違いない以上、我々としては、あくまで弁護士が主体的に業務に携わることを大前提としたうえで、うまくリーガルテックを使いこなすことが、結果的には依頼者の利益に資することになるであろうと思います。

これから一緒に働く方に対して求めること

まずは知的好奇心が旺盛であることです。新しい分野へ躊躇なくチャレンジできる性格であることは、我々が携わる仕事では重要な要素だと思っています。経験や知識がない仕事の話を、楽しんで聞き、勉強し、自分のものとして吸収できることは、とても大事だと思っています。

あとは事務所ブログのみならず、SNSを含めてメンバーは比較的よく情報発信しているので、これらもご覧いただいたうえで、ご自分とマッチしそうかどうかをご判断いただけたら嬉しいと思っています。

コロナ禍での働き方

会議や文献調査において、オンラインツールはコロナ禍前から積極的に利用していたこと、案件の種類として、裁判期日はそれほど大量でもないことから、コロナ禍によって困ることはそれほど多くありませんでした。ただ、アソシエイトの育成やコミュニケーションの観点からは、リアルで顔を合わせる機会が少なくなった影響はあると思います。特に新人教育は他の事務所と同様にOJTがメインなので、オンラインで「伝える」ことの難しさを感じることもありました。

コロナ前後で社会が変化していく様子や、業態転換を迫られる企業を、この1年半で多く目の当たりにしました。もちろん、コロナ禍は未曾有の事態ですが、それをチャンスと考え、新しい事業を含め積極的に事業展開を行う企業も沢山います。我々が主として携わるITやAI/データ、オンラインビジネス法務の分野は、動きが速く、変容する時代に即応して変化し続けるという特質を持った企業が多数存在しています。これらの分野を中心としつつ、依頼者のため、社会のために有益と判断すれば、弁護士として、そして事務所としてあらたな価値提供のかたちを、柔軟かつ積極的に検討していきたいと考えています。

非常に「人材」を大切にし、教育にも力を入れていることが十分伝わったSTORIA法律事務所さんへのインタビューでした。

当初、我々はITに強い弁護士事務所だけにクールな印象を持っておりインタビュー当日も緊張していたのですが、非常に熱のこもった話をして下さったことで緊張を解いてくれました。

柿沼弁護士、杉浦弁護士、インタビューにお答えいただきありがとうございました。

インタビュー日:2021年8月17日

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