スチュワードシップ・コードとは?2020年に改正され、ESGヘの対応強化へ

スチュワードシップ・コードとは

「日本版スチュワードシップ・コードに賛同します」という文言をご覧になったことがありますでしょうか?この表現は投資信託運用会社のサイトなどに記載されています。スチュワードシップ・コードとは受託者責任を果たすための行動規範のことです。この記事では日本版スチュワードシップ・コードについて解説します。

スチュワードシップ・コードとは?

スチュワードシップとは「受託者責任」と訳すことができ、コードとは「行動規範」を指します。スチュワードシップ・コードは英国企業の株式を保有する機関投資家向けに策定(2012年9月)されたもので、それを規範として「日本版スチュワードシップ・コード」が誕生したのです。

誕生の経緯

日本では、成長戦略であるアベノミクスの第三の矢(2013年 6月24日公表)における日本再興戦略の中で、コーポレートガバナンスを見直し、公的資金等の運用の在り方を検討すると盛り込まれました。

そんな中、機関投資家が対話により企業の中長期的成長を促すなど、受託者責任を果たすための原則の取りまとめが閣議決定されたのです。これが日本版スチュワードシップ・コードです。

その結果、金融庁に有識者検討会おかれ、日本版スチュワードシップ・コードが策定・公表(2014年2月26日)されたのです。

範囲と目的

日本版スチュワードシップ・コードの範囲は、日本株に投資している国内外の機関投資家で、資産運用者(運用会社など)のみならず資産保有者(保険会社や年金基金など)なども含みます。

投資家の責任や義務を明確化し、中長期的に投資家・企業間で緊張感のある関係構築を目的としています。

スチュワードシップ責任

日本版スチュワードシップ・コードは、責任を明確化した上でその責任を果たすための7つの原則(後述)を定めています。

法的拘束力はないものの、金融庁設置の検討会が策定しているため、多くの機関投資家が賛同を表明しています。
そんな日本版スチュワードシップ・コードは、機関投資家が投資先企業や事業に対して深い理解をし、建設的な対話を通じて企業価値向上や持続的成長を促すことで、中長期的な投資リターンの拡大を図るという責任があります。

スチュワードシップ・コードの原則

日本版スチュワードシップ・コードは、先述の目的を満たすため、7つの原則を設定しています。7つの原則の具体的内容は以下のとおりです。

・1.機関投資家は、スチュワードシップ責任を果たすための明確な方針を策定し、これを公表すべきである。

・ 2.機関投資家は、スチュワードシップ責任を果たす上で管理すべき利益相反について、明確な方針を策定し、これを公表すべきである。

・ 3.機関投資家は、投資先企業の持続的成長に向けてスチュワードシップ責任を適切に果たすため、当該企業の状況を的確に把握すべきである。

・ 4.機関投資家は、投資先企業との建設的な「目的を持った対話」を通じて、投資先企業と認識の共有を図るとともに、問題の改善に努めるべきである。

・ 5.機関投資家は、議決権の行使と行使結果の公表について明確な方針を持つとともに、議決権行使の方針については、単に形式的な判断基準にとどまるのではなく、投資先企業の持続的成長に資するものとなるよう工夫すべきである。

・ 6.機関投資家は、議決権の行使も含め、スチュワードシップ責任をどのように果たしているのかについて、原則として、顧客・受益者に対して定期的に報告を行うべきである。

・7.機関投資家は、投資先企業の持続的成長に資するよう、投資先企業やその事業環境等に関する深い理解に基づき、当該企業との対話やスチュワードシップ活動に伴う判断を適切に行うための実力を備えるべきである。

「スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会」
https://www.fsa.go.jp/news/29/singi/20170529/01.pdf

この原則を踏まえ、運用会社がそれぞれ検討し、それを公式サイトなどで表明をしています。

運用について

日本版スチュワードシップ・コードは、各機関投資家の状況に応じて、異なる方法で責任を果たすことが求められています。上記7原則を実施するか、しない理由を説明するかという枠組みにより、各機関投資家の事情にも配慮がなされています。

日本版スチュワードシップ・コードの具体的取組は受け入れ表明とウェブサイトでの開示ですが、形式的な状態にならない運用が期待されています。その上で、3年ごとを目安として内容の見直しが行われる予定となっています。

受入れを表明先一覧

日本版スチュワードシップ・コードの受け入れを表明している機関投資家は、2019年12月27日時点で273件にも上っています。具体的な内容は以下のとおりです。

  • 信託銀行等:6件
  • 投信・投資顧問会社等:188件
  • 生命保険・損害保険会社:23件
  • 年金基金等:49件
  • その他(議決権行使助言会社他):7件

参考資料
スチュワードシップ・コードの受入れを表明した機関投資家のリストの公表について

スチュワードシップ・コードとは?:まとめ

日本版スチュワードシップ・コードは、英国のスチュワードシップ・コードを規範とし、アベノミクスの第三の矢の一部として盛り込まれました。投資家の責任や義務を明確化し、中長期的に投資家・企業間で緊張感のある関係構築を目的としています。

それを踏まえ7つの原則を定め、運用会社がそれぞれ検討し、それを公式サイトなどで表明をしています。多数の機関投資家が受け入れを表明しており、形式的な状態にならない運用が期待されています。

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