コンプライアンス対策において企業法務が気をつけたい事柄5選

コンプライアンス対策において企業法務が気をつけたい事柄5選

会社を健全に経営していくうえで、もはやコンプライアンスは欠かせないものとなっています。しかし、企業法務がコンプライアンス対策を構築する場合、どこに重心をおいて、どの方向に視点を向けるのかということを明確にしておかないと、まるで機能しないという事態にもなりかねません。
この記事では、コンプライアンス対策において、企業法務が気をつけるべき事柄とは何かについて解説します。

コンプライアンスとは何か

「コンプライアンス」は、今やすっかり日本語として定着した感があります。直訳すれば「法令順守」だということは改めて説明するまでもないでしょう。
しかし、企業におけるコンプライアンスは、単に法律を守るという観点だけでは成り立ちません。

まず法令順守に加えて、社内規定やマニュアルなどの社内規範が含まれます。さらには、法律や規定では補いきれない、社会常識、論理観、公平性、品位、誠実さといった社会的要請を守るということも含めて、コンプライアンスだということを認識する必要があるのです。

なぜ企業は法令順守だけではだめなのか

企業が特定の消費者に対して明らかに不公平な取り扱いをしたとしても、違法でないかぎり、刑事責任を問われることはありません。しかし、その事実が世間の知るところになると、企業は大きな社会的批判を浴びることになります。バッシングによって、やがて経営上の大きなダメージを受けることも少なくないのです。

言うまでもなく、企業は経営者だけで成り立っているものではありません。株主、従業員、顧客、取引先といったカテゴリーから支えられることによって持続し得る組織だということです。

このため、不正に対して適切な対応をとらないと、消費者や取引先からの信用を失い、法令違反をしたときと変わらない、状況によってはそれ以上に取り返しの付かない状況まで追い込まれることになります。

つまり、コンプライアンスを単に法令順守と捉えるのではなく、社会的規範から逸脱していないかという視点も、常に持ち合わせていないといけないのです。

コンプライアンス対策で企業法務は気をつけるべきことは何か

それでは、コンプライアンス対策を講じるうえで、企業法務は何に気をつければいいのでしょうか。ここでは、具体的に5つの事柄を挙げて解説していきましょう。

その1:社内でコンプライアンスを共有する

コンプライアンス対策の第一歩は、コンプライアンスに対する基本方針や行動基準を定めることから始まります。ここで注意したいのが、行動基準の定め方です。

コンプライアンスが狭義の法令順守のみであれば、行動基準は一部の法律専門家に任せればよいということになります。誰が作成に携わっても、成果品はほぼ同じ内容に仕上がるからです。

しかし、先述したように、企業におけるコンプライアンスは、社会的論理観を含めたものですから、個人の価値観によって、さまざまな考え方が交錯しています。

もし社内の選抜チームに行動基準の作成を任せた場合、従業員は会社からの押し付けだと感じ、それを自分の業務に直結する努力を怠ることになります。
このため、コンプライアンス対策を構築するに当たっては、まず骨格的なものを現場に提案して、業務手順や対応策について、現場の声を吸い上げていくという手順が重要です。

社内一体で作成した行動基準を共有することにより、顧客からの声を日常的に意識する体制ができあがり、リスクの予防とモニタリング、さらには自社の事業に関するリスクを予測することが可能になります。

その2:問題に対して早期に対応する組織づくり

企業がコンプライアンスに抵触した過去の事例を振り返ると、いかに「初期消火」に腐心したかによって、その後の評価が大きく異なってくることが分かります。

コンプライアンス対策において重要なのは、リスクを発生させないということよりも、発生後にリスクを拡大させない体制を作ることです。

従業員が問題点を発見したときに、ただちに上司に報告をして、それをさらに経営陣まで上げるという風通しのよさこそが、問題を拡大させない要素となり得ます。反対に隠蔽体質の土壌が根深い場合、問題が発覚したときには、もはや手の打ちようがない窮地に追い込まれることにもなりかねません。

つまり、問題の発覚を企業の体質を改善する絶好の機会だと捉える社風を築き上げることこそが目指すべき道だということです。

その3:内部通報制度を構築する

企業の法令違反を発見した際に、内部通報した従業員が不利益な扱いにならないように保護するための法律として、公益通報者保護法があります。

内部通報者のもたらす情報が会社経営にとって有益であることは明白ですが、それ以前に内部通報者が自らの身分を賭して通報した事実を忘れてはいけません。このため、企業法務は法の主旨が十分に機能するように、内部通報制度を構築する必要があります。

具体的には、公益通報者保護法第3条に沿って、次のような対策を盛り込むことが求められます。

  1. 公益通報を行っても解雇やその他の不利益な処分が行われないようにする。
  2. 公益通報をしても、証拠を隠滅したり改ざんしたりされないようにする。
  3. 公益通報をした日から20日以内に調査を行う旨を通報者に通知するとともに、確実に有益な調査を実施する。
  4. 通報者の生命や身体の保護に努める。
  5. 会社と独立した相談窓口を設置する。

内部通報は、けっして企業を貶めるためのものではなく、企業をさらに発展させる行為だという視点を失念してはいけません。そのためにも内部通報者は、必ず不利益から保護されるという姿勢を内外に強く示す必要があります。

その4:ハラスメント対策を実施する

パワーハラスメントやセクシャルハラスメントが、企業で取り扱うべき問題だと広く認識されるようになって、相当の年月が経過しましたが、いっこうに問題が解消する様子はみられません。

ハラスメントは、社内の問題だと放置しておくと、経営にも大きな影響があることを認識しておく必要があります。つまり、ハラスメントが蔓延した職場は、有能な人材から敬遠されるばかりでなく、やがて商品イメージの悪化につながり、売上ダウンにも通じかねないからです。

セクシャルハラスメントは、厚生労働大臣の指針が定められています。この中では、セクシャルハラスメントの行為者に対する厳正な退所や相談窓口の設置などが示されています。しかし、この指針を有効に活用できる仕組み作りが企業内に構築できていないと、問題の解決に向けてまったく機能しないことになります。

またパワーハラスメントは、業務上の指導範疇内と外との線引きが難しいという問題を包含しています。しかも、現時点では国からの明確な対策指針は示されていません。しかし、無為に放置しておくと、貴重な従業員を喪失するという最悪の事態を招きかねないのです。それだけに、企業法務には、会社方針の明確化と周知啓蒙を急ぐとともに、相談に適切に対応する体制づくりの充実が求められます。

その5: 反社会勢力の排除

近年の企業には、暴力団を始めとする反社会勢力を社会から排除するための積極的な取り組みをすることが求められています。このため反社会勢力からの不当な要求には、毅然と拒絶するとともに、暴力団との関係を断つことが基本的な立場です。

反社会勢力の排除には、何より企業の姿勢を対外的に示すことが重要です。このため、「反社会勢力排除宣言」等を採用して、外部に広く知らしめるとともに、コンプライアンスの基本方針として反社会勢力と一切関りを持たないという事項を盛り込むことが重要です。

これを具体的に進めるために、法令に基づいた誓約書を取引先や下請け企業に求めることが必要になります。また社員の採用に際しても、採用時のチェックをすり抜けてしまった際の対策として、暴力団と関わりがない旨の誓約書を提出させる仕組みを据えておくことが重要です。

コンプライアンス対策において企業法務が気をつけたい事柄5選:まとめ

コンプライアンス対策として、企業法務は行動基準を定める必要があります。ここで重要なのは、社内一体で築き上げるという姿勢です。上からの押し付けだと、どうしても反発心が生まれ、なかなかうまく機能しません。現場の声をどのように行動基準に反映させるかが大きなポイントとなります。

行動基準策定後は、会社全体で共有するという意識が大切です。また策定当初は、有効に機能していても、慣れから油断が生じることがあります。常に、行動基準が心の片隅に存在するよう、定期的な研修も欠かすことはできません。

コンプライアンス対策においては「言うまでもない」といった、いわば「常識的」なものも存在します。しかし、価値観が多様化した現在、また従業員の国際化が進捗した今日、その常識的なことにこそ落とし穴があることを肝に銘じながら、コンプランス対策を進める姿勢が企業法務に求められているのです。

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