契約の種類を5つの視点から解説

契約の種類を5つの視点から解説

一口に契約と言っても、その種類や分類の方法は多岐に渡ります。今回の記事では、契約の種類を5つの視点から解説します。

典型契約・非典型契約

「民法による規定の有無」という視点から分類した場合、「典型契約」と「非典型契約」の2種類に大別できます。

典型契約

典型契約とは、民法で規定される下記13種類の契約を意味します。

  • 贈与(当事者の片方が無償で財産を与える契約)
  • 売買(片方が財産を与え、もう片方がその対価を支払う契約)
  • 交換(金銭以外の財産権を移転し合う契約)
  • 消費貸借(種類や品質、数量が同じ物を返還をする旨を約束した上で、財産を受け取る契約)
  • 使用貸借(無償で何かを借りる契約)
  • 賃貸借(使用料を支払った上で何かを借りる契約)
  • 雇用(片方が労働力を提供し、もう片方がその対価として報酬を支払う契約)
  • 請負(片方が仕事を完成させる旨を約束し、もう片方がその結果に対して対価を支払う契約)
  • 寄託(片方が相手方の物を保管する契約
  • 組合(複数人が共同で事業を行う契約)
  • 終身定期金(一方がもう片方に対して、定期的に金銭を与える契約)
  • 和解(争いを解決する契約)

非典型契約

民法に規定されていない契約(上記以外)は、すべて非典型契約となります。たとえば、レンタル契約やリース契約などが該当します。

要式契約・不要式契約

「契約成立における方式の必要性」という視点で分類すると、「要式契約」と「不要式契約」の2種類に分けられます。

要式契約

要式契約とは、契約の成立に一定の方式が必要となる種類の契約です。基本的に日本では、誰とどのような契約でも自由に締結できるという「契約自由の原則」が最優先されます。そのため、ほとんどの契約では方式に制限はありません。

しかし法律上の身分が変わったり消滅するような契約の場合、契約の締結には慎重さや明確さが求められます。そこで一部の契約については、書面の作成や届出などの方式を必要としています。要式契約の最たる例が「保証契約」です。民法第446条の規定により、保証契約は書面で行わなければその効力を生じないとされています。

参考:民法第446条 e-Gov

不要式契約

一部の契約を除いて、ほとんどの契約は特別な方式を必要としない不要式契約となります。たとえば売買契約や賃貸借契約などは不要式契約なので、理論上は口頭のみでの合意でも成立します。

ただし後から「言った・言わない」などのトラブルに生じるリスクがあるため、実務的には不要式契約でも契約書を作成するのが一般的です。

要物契約・諾成契約

「契約時における引き渡しの必要性」という視点で見ると、「要物契約」と「諾成契約」の2種類があります。

要物契約

要物契約とは、当事者同士の同意に加えて、物の引き渡しがあることで成立する契約です。たとえば、使用貸借や消費貸借、寄託が要物契約に該当します。

諾成契約

諾成契約とは、当事者同士の同意のみで成立する契約です。前述したとおり、日本では契約自由の原則が最優先されるため、ほとんどの契約は諾成契約となっています。

有償契約・無償契約

「当事者による経済的支出」という視点では、「有償契約」と「無償契約」の2種類に分類可能です。

有償契約

有償契約とは、当事者双方が互いに経済的な支出を行う契約です。その最たる例が売買契約であり、売り手は「商品」という経済的な価値のある財産を支出し、買い手は対価として「現金」を支出します。

売買契約を加えて、交換や賃貸借、雇用、請負、組合、和解の計7種類の契約は、常に有償契約となります。また、委任や寄託、消費賃貸などの契約も、有償契約となることがあります。

無償契約

無償契約とは、経済的な支出を伴わない契約や、当事者の片方のみが経済的な支出を行う契約を意味します。具体的にはタダで相手方に何かしらの価値を提供する行為が当てはまります。典型契約の中では、贈与と使用貸借がかならず無償契約となります。

双務契約・片務契約

「当事者が負担する義務」という視点では、「双務契約」と「片務契約」の2種類に大別できます。

双務契約

双務契約とは、当事者が互いに対価としての意味を持つ義務を負う契約です。たとえば双務契約の一種である売買では、売り手は「商品を提供する義務」を負い、買い手は「代金を支払う義務」を負います。

見て分かるとおり、双務契約はかならず有償契約となります。したがって、「売買」、「交換」、「賃貸借」、「雇用」、「請負」、「組合」、「和解」の計7種類の契約は、すべて双務契約でもあります。

片務契約

片務契約とは、当事者の片方のみが対価としての意味を持つ義務を負う契約です。

たとえば贈与の場合、片方が「現金を渡す」という義務を負う一方で、もう片方は特段何かしらの義務を負わないため、片務契約となります。贈与以外には、消費貸借や使用貸借も片務契約に該当します。

契約の種類を5つの視点から解説:まとめ

契約にはあらゆる種類があり、それぞれどのような条件で契約が成立するかは異なります。特に「要式契約・不要式契約」と「要物契約・諾成契約」に関しては、知らないと契約を行うさいにトラブルになり得るので注意が必要です。

次回の記事では、「契約の履行・不履行」について詳しく解説します。こちらも重要な論点ですので、ぜひ参考にしていただければと思います。

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