監査役とは?取締役との違い、権限、選任方法などをまとめて確認
- 2022/3/23
- 法令コラム
会社についての法改正は、会社の「不祥事」があるたびに繰り返されてきました。
多くの不祥事は粉飾決算や各種法令の違反行為であったことから、経営陣の専断的な業務運営を防止し、会社に法令を遵守させることが法改正の目的とされ、監査役という制度が設けられたのです。
会社法362条5項の内部統制システム構築義務と関連して社内監査制度の重要性が高まってきていることから、会社における監査役の責任がより重大となってきました。
まず、監査役の定義と主な業務内容についてみていきましょう。
監査役とは
「監査役」とは、株式会社において取締役や会計参与などの役員の業務を監査・監督する役職です。
その会社の経営において業務や会計上の不正がないかチェックし、不正があれば是正を行います。
法律上監査役を置くことを決められているのは、従業員が多い会社や売上規模が大きい会社になります。
具体的には、大会社(資本金5億円以上または負債が200億円以上)や、公開会社(株式の全部が譲渡制限のない会社)は、監査役を置くことが義務付けられています。もちろん、任意に監査役を置くことは可能です。
しかし、株式会社では取締役が業務の監督をすることになっています。それなのになぜ監査役が必要とされるのでしょうか。監査役による監査と取締役会による監督との違いをみていきましょう。
監査役は、会計分野を含む業務全般に関し、取締役の職務執行を監査しますが(会社法381条1項)、法令定款違反の抑止に主眼を置いているため、適法性の観点からの監査が中心となります。このため、監査役は経営組織から独立し、独自の調査権限を行使して監査を行います。これに対して、取締役会による監督は、経営判断の妥当性やパフォーマンス評価も含み、仮にそれらに疑義が生じた場合、取締役は取締役会における議決権と人事に関する決定権限を背景に是正を試みることになります。
さらに、監査役と取締役の任期には、違いがあります。
監査役の任期
取締役の任期は原則として2年ですが、監査役が原則として4年です。取締役・監査役ともに10年まで伸長することができます。監査役に求められる役割を考慮するとある程度の期間が必要で、また、監査役の地位を確保するために取締役より任期が長くなっていると考えられます。
監査役の選任方法は取締役の選任方法と同じです。
監査役は、株主総会の普通決議において選任されます(会社法329条1項)。監査役の選任は会社の経営に重要な影響を与えるため、株主の意思に基づいて決定される必要があるからです。株式会社と監査役との関係の関係についても取締役と同様です。株式会社と監査役の関係は雇用契約ではなく委任契約となっています。そのため、監査役には「善管注意義務」が課せられることになります。
株式会社には監査役のみならず監査役会が置かれることがあります。
監査役は会社から独立した機関ではありますが、人的関係から監査役に就任した後も経営陣に直接苦言を呈することがしにくいという場面がありました。そこで、平成5年商法改正において、大会社の監査役の中に社外監査役がいなければならないとする改正が行われたのです。
その社外監査役の制度の導入に合わせて設けられたのが監査役会制度です。
監査役会とは、普段会社に居らず、会社内の日常的な情報に触れる機会に乏しい社外監査役を含めて、監査役間の意思統一や役割を定めた組織的な監査をやりやすくすること等を目的とする機関のことをいいます。現在では、監査役会を構成する3名以上の監査役の半数以上は社外監査役でなければならないとされています(会社法335条3項)。
最後に、監査役の権限を詳しくみていきます。
監査役の権限
監査役は、各人がそれぞれ独立してその任務にあたります。たとえば、子会社等の調査についてもそれぞれが行うことができ、監査報告の内容も監査役間において一致させる必要はありません。適法・違法の評価は他人の影響を受けるべきではないし、多数決原理になじむものでもないことが、調査権限の独立性を認めている理由とされます。
社内監査についても必要な情報を取得するために、いつでも取締役、会計参与、支配人その他の使用人に対して事業の報告を求め、会社の業務財産の状況を調査する権限を有しています。
監査役が、取締役による不正行為またはそのおそれ、法令・定款違反の事実や著しく不当な事実があると考えた場合には、まず遅滞なく取締役あるいは取締役会に報告し(会社法382条)、状況によっては、取締役会に対して内部統制システムの構築や代表取締役の解職を助言・勧告すべき場合もあるとされています。さらに監査役には、取締役の法令・定款違反によって会社に著しい損害が生じるおそれがある場合に当該行為をやめるように請求することができる権利も法律上認められています(会社法385条1項)。
以上のことから、株式会社において監査役の役割はとても重要なものであることがわかりました。法令・定款違反を防止するためにも監査役を置くことが望ましいといえるでしょう。