テレワーク導入で解決が期待される経営課題
- 2020/7/22
- 法令コラム
高齢化社会が進み、労働力人口が減少することを見据えて働き改革が進められています。労働力人口は2014年6,587万人から2030年5,683万人、2060年には3,795万人へと加速度的に減少し、総人口に占める労働力人口の割合は、2014年の約52%から2060年には約44%に低下すると予測されています。40年後には働く人よりも支えられる人が多くなると考えられているのです。
労働力人口の減少により、国内市場が縮小し、経済面へのマイナス影響があると心配されています。さらに、労働力不足を補うために、長時間労働が更に深刻化するという悪循環も懸念されています。そこで政府は、働き方改革により、少しでも働きやすい環境を作って労働力人口を維持しようとしているのです。
参考:内閣府「人口・経済・地域社会の将来像」
働き方改革では、長時間労働の是正、非正規社員の処遇改善、賃金引上げと労働生産性の向上、仕事と介護の両立、高齢者の就業促進、外国人の受入を計画しています。その中でも重点施策とされているのが、長時間労働の是正、労働生産性の工場、仕事と介護の両立に有効と言われるテレワークです。
しかし、いくら政府がテレワークを推進しようとしても、企業にとってメリットがなければテレワークの導入は進みません。では、テレワークを導入すると、企業はどのような経営課題を解決できるのでしょうか。
テレワークを導入することで解決が期待される経営課題1. 生産性の向上
企業は労働力人口の減少、グローバル化による競争力の激化のため日々生産性を高めることが求められています。テレワークを導入するにあたって、業務フローの見直しやペーパーレス化、ネットワーク上での情報共有が必要となるため、結果的に業務効率の改善が期待できます。
また、テレワークの導入により在宅勤務や自宅近くのサテライトオフィスへの通勤、客先への直行直帰が可能となり移動時間を削減できます。オフィスにおいてフリーアドレス(固定の席を決めずに、自由に席を選ぶことができる制度)を同時に導入することで、備品やオフィススペースなどを削減できるため、長期的なコスト削減が可能になります。
株式会社NTTドコモでは、テレワークの導入により、残業時間前年度比10%削減したようです。
“社内WGが働き方・業務見直しのテーマで着目。経営トップのコミット「自社の働き方改革推進と社会への提供」により、働き方改革の取り組みが活性化し、残業時間前年度比10%減など効率化における一定の成果に繋がった。(NTTドコモ)”
テレワークを導入することで解決が期待される経営課題2. 外部環境変化への対応
グローバル化に伴い、国内企業とのやり取りだけでなく、海外企業との連携が日常的になりつつあります。テレワークを導入することによって、海外企業の時間に合わせた早朝出勤や深夜残業をしなくてよくなります。
また、テレワークの導入により、地方の人材の活用や遠隔地の社員とのコミュニケーションを促進できます。ある地方団体では、都内の企業から経理事務などを受託し、オフィスに集めた地元の個人事業主に仕事を斡旋しているようです。都内の企業は、テレワークで地方にいる個人事業主とコニュニケーションを取り仕事を進めることができます。
テレワークを導入することで解決が期待される経営課題3. 人材確保
少子高齢化時代に入り労働力人口が減少しているなかで、育児や介護をきっかけに離職するケースが増えています。テレワークを導入することで、育児や介護と仕事を両立させることが可能になります。結果的に優秀な社員の離職を防ぐことにつながっていきます。
また、テレワーク環境が整備されることによって、企業の魅力が高まり求職者からの応募が増える効果も期待できます。
テレワークを導入することで解決が期待される経営課題4. BCP(業務継続)対応
台風や大雪による公共交通機関が麻痺したり、大規模災害発生時に出勤できない場合でも、在宅勤務でテレワークを実施できれば、業務を継続することが可能です。
米国では、民間企業だけでなく、連邦政府や州政府などでも危機管理への対応が進み、事業継続計画が広範に普及し、連邦政府ではテレワークが事業継続計画の大きな柱になっているそうです。
参考:総務省「働き方改革のためのテレワーク導入モデル」
テレワーク導入で解決が期待される経営課題:まとめ
テレワークは、政府が進める働き方改革の重点政策の一つになっています。企業や団体がテレワークを導入することにより「生産性の向上」「外部環境への変化」「人材確保」「BCP(業務継続)対応」という4つの経営課題を解決することが期待されています。
特に、昨今は人材不足で悩んでいる企業が多くあり、テレワークを導入することで、育児や介護を理由とした離職防止や地方人材の活用が期待されています。
参考文献
内閣府「人口・経済・地域社会の将来像」
総務省「働き方改革のためのテレワーク導入モデル」