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株式会社テクノメディカの優れた第三者委員会報告書

優れた調査報告書の解説(株式会社テクノメディカ)

第三者委員会が作成した調査報告書の一部は、「優れた調査報告書」として格付け委員会から表彰されています。今回は、表彰された調査報告書の中から、株式会社テクノメディカの調査報告書に関してくわしく解説します。

事件の概要

今回表彰された調査報告書は、株式会社テクノメディカの不適切な会計処理を取り上げたものです。具体的には、一部製品の売り上げについて前倒しで計上していたことや、架空の売り上げが計上されたことが問題として調査報告書で指摘されています。

本件における第三者委員会の役割と委員選定のポイント

本件の第三者委員会の役割と委員選定

本件の調査報告書を取りまとめた第三者委員会は、「事実関係の調査」、「問題の原因究明」、「再発防止策の提言」を担いました。

本件を調査した第三者委員会は、テクノメディカ社と利害関係を有しない下記三名の委員で構成されました。

第三者委員会の活動スケジュール

事の発端は、同社の2016年3月期における会計監査にさかのぼります。同社の会計監査人である有限責任監査法人トーマツは、同社の主力製品に関する売上取引について、監査法人が同社から受けていた説明とは異なる実態が生じている可能性を把握しました。

不適切な会計処理を疑った監査法人は、2016年4月23日にテクノメディカに対して事実を究明するために、第三者委員会の実施を求めました。これを受けて同社は、同年4月28日に取締役会を開催し、第三者委員会の設置を決議しました。

調査はおよそ2ヶ月にわたって行われ、同年6月23日に第三者委員会が作成した調査報告書が公表されました。 問題の発覚から調査報告書が公表されるまでのスケジュールは下記になります。

本件の調査方法

第三者委員会は、合計35人の役職員に対するヒアリング、会計データの閲覧・分析、デジタルフォレジック(電子データの分析)の実施、工場への実地調査などの方法で調査を行いました。

2010年4月から2016年3月までの取引が調査対象となったことから、比較的大規模に調査が行われたといえます。

調査報告書で判明した事項

第三者委員会の調査で何が分かったのか

第三者委員会の調査では、本件問題の詳細と当事者の認識が明らかとなりました。

まず本件問題は、「売上高の前倒し計上」と「架空の売上高計上」に分けられます。売上高の前倒し計上については、2007年3月期頃から仕入れ先の企業を利用して行われたことが判明しました。

一方で架空の売上高計上については、2010年3月期以降より、業績目標を達成するために行われたとのことです。まだ受注されていない案件について架空の売上高を計上したり、架空の製品売買をでっち上げて架空の売上高を計上する方法が用いられたことも判明しています。

なお同社の営業担当者は、会社が認めた方針であるため、そもそも不適切な会計処理であるとは認識していなかったとのことです。一方で常務取締役であった野田氏は、不適切であると認識していたと調査報告書に記載されています。

第三者委員会の調査とその影響で生じた費用

テクノメディカ社によると、第三者委員会による本件の調査にかかった諸費用として、2億2,300万円の特別損失を計上しました。また、調査報告書の結果に基づいて会計処理を訂正した結果、4億3,400万円の特別損失を別途で計上したとのことです。

合計で6億円を超える費用を計上していることから、本件の不正は同社の業績に大きな影響を与えたといえます。

また第三者委員会の調査結果は、株価にも深刻な影響を与えました。第三者委員会による調査報告書が公表された当日(2016年6月23日)の終値は1,769円でした。しかし翌日には、終値が1,479円まで下落しました。

売り上げの架空計上という重大な不正であっただけに、投資家をはじめとした社会からの信用は大きく失墜したと言えるでしょう。

本件問題の根本的な原因

調査報告書では、本件問題の根本的な原因として下記の項目を指摘しています。

創業者を始めとした経営陣が業績の向上を最優先するあまり、役職員が不正をしてでも業績を向上させようという考えに至ったことが、本件の根本的な原因であるといえます。また、不正を監督する内部統制が構築されていなかった点も調査報告書では指摘されています。

優れた調査報告書に選ばれた理由

本件に関する調査報告書は、優れた調査報告書として格付け委員会から高評価を受けました。優れた調査報告書として選ばれた理由に関して、評価した委員は以下のように述べています。

本件の調査は、会社側からの協力をほとんど得られなかった上に、説明にも虚偽があったため、非常に難航しました。そんな状況下で詳細な調査を行い、経営陣の責任を明確にできた点は、今後の調査報告書作成においてお手本になる事例です。

株式会社テクノメディカの優れた報告書:まとめ

第三者委員会の調査に関しては、必ず当事者である企業からの協力を十分得られるとは限りません。たとえ協力を得られなくても、本件のように入念な調査を行うことが第三者委員会には求められているのです。

【参考文献】
優れた第三者委員会報告書の表彰について 優れた第三者委員会報告書表彰委員会
第三者委員会の調査報告書受領に関するお知らせ 株式会社テクノメディカ
(株)テクノメディカ【6678】:株式/株価 – Yahoo!ファイナンス
特別損失の計上に関するお知らせ 株式会社テクノメディカ

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