この記事では、株式会社コメ兵のグループ会社社員が起こした横領問題を事例に、社内調査委員会の活動や調査結果をお伝えします。
問題の背景
本件は、リサイクルショップ業を営むコメ兵のグループ会社である「BRAND OFF LIMITED(香港法人)」の社員が、同社の資金を横領していた問題です。
本件における社内調査委員会の役割と委員選定のポイント
本件の社内調査委員会の役割と委員選定
本件を調査した社内調査委員会は、主に下記4つの役割を担いました。
- 本件に関する事実関係の調査
- 本件による財務諸表への影響額の確認
- 類似事案の有無の調査
- 本件が生じた原因分析と再発防止策の提言
本件を調査した社内調査委員会は、下記6名の委員で構成されました。
- 委員長:小崎 誠 (当社取締役監査等委員)
- 委員:瀬古 正 (当社常務取締役)
- 委員:興津 旬也 (当社執行役員管理本部長)
- 委員:蟹江 宏治 (当社内部統制室長)
- 委員:山内 祐也 (株式会社K-ブランドオフ 代表取締役)
- 委員:江﨑 武(株式会社K-ブランドオフ 取締役)
なお本件の調査では、客観的な調査を行うために、社外の会計・税務の専門家として下記3名の専門家も調査に協力しました。
- 白水幹 範(税理士 アースタックス・ビジネスコンサルティング)
- 鈴木 智洋(弁護士 後藤・鈴木法律事務所)
- 川島 睦美(弁護士 川島睦美律師事務所
外部の専門家を調査に入れている点から、実質的には第三者委員会の調査に近い形で行われたと言えます。
社内調査委員会の活動スケジュール
では次に、本件が発覚した経緯や第三者委員会の活動スケジュールを確認してみましょう。
本件が発覚した発端は、2020年1月22日にグループ会社化後のフォロー監査を目的に、当社の内部監査担当者が来店したときにさかのぼります。この時に、香港のグループ会社であるBRAND OFF LIMITEDの社員が、経理担当としての立場を使うことで同社の資金を横領していたことが発覚したのです。
そこで同社は、本件の客観的な調査を行う目的で、同年1月25日に社内調査委員会を設置し、具体的な調査を開始しました。調査はおよそ半月にわたって行われ、同年2月14日に調査報告書が公表されました。
問題が発覚した時点から、調査報告書が公表されるに至るまでのスケジュールは下記の通りです。
- 2020年1月22日 グループ会社社員による横領が発覚
- 2020年1月25日 社内調査委員会が設置される
- 2020年2月14日 調査報告書が公表される
本件の調査のポイント
本件調査のポイントは、社内調査委員会による調査であるにも関わらず、外部の専門家を交えて詳細な調査が行われた点です。本来社内調査委員会では、社内の人員のみで調査を進めるのが一般的です。
しかしコメ兵の社内調査委員会では、外部の弁護士や税理士を交えた上で、インタビューや関係資料の精査を行いました。第三者委員会のように利害関係のない第三者を交えたことで、より客観的な調査を行えたと言えます。
社内調査委員会によって何がわかったのか
社内調査委員会の調査により判明した事項
社内調査委員会の調査により、横領が行われた方法や具体的な横領額が発覚しました。今回横領を行った社員Aは、当時業者買取資金の出入りを記録する「Wholesale」と銀行からの出金現金の受入や店舗買取資金の配金を記録する「Office」という、計2種類の現金出納帳を単独で管理していました。
この立場を利用して社員Aは、業者買取資金の出入りや領収書等を参考にして残高の相違が生じないようにしつつ、単独で横領を繰り返していたとのことです。社内調査委員会によると、社員Aによる横領額はおよそ1億円にも上るとのことです。
社内調査委員会の調査によって生じた費用・影響
コメ兵は、本件の調査に要した費用は公表していないものの、横領による損失額は公表しています。具体的な損失額は、およそ8,383万円にのぼるとのことです。
また、コメ兵グループ会社社員による横領は、株価にも若干ながら影響を与えています。調査報告書が公表された2月14日の終値は1,036円でしたが、3日後の17日には950円まで下落しました。ネットニュースをはじめとして各所で報道されたことが、一時的な社会的な信用力の低下につながったと言えます。
根本的な原因
本件を調査した社内調査委員会は、本件が生じた根本的な原因として下記2点を指摘しています。
- 業務管理体制や社内監査、内部監査の体制が整っていなかったこと
- 海外子会社の運営について、現場の担当者任せであったこと
業務管理や内部監査の不備から横領が起きやすい環境となっていた上に、いざ問題が生じた際の対策が親会社(コメ兵)側で考えられていなかったことが、根本的な原因になったのです。
コメ兵グループ会社社員による横領に関する社内調査委員会の解説:まとめ
本件は社内調査委員会によって調査が行われたものの、内部監査の不備や本社側の過失について指摘がなされている点で、第三者委員会による調査にも劣らない客観性を担保できていると言えます。
第三者委員会にしろ社内調査委員会にしろ、問題を根本的に解決するためには、客観性をしっかりと確保することが重要と言えます。
参考文献
・調査委員会からの調査報告書受領に関するお知らせ 株式会社コメ兵
・(株)コメ兵 yahoo!ファイナンス
・コメ兵グループ社員による不正行為が発覚、1億円着服の疑い Yahoo!ニュース