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Gunosy子会社の不正な広告制作・配信における第三者委員会の解説

Gunosy子会社の 不正な広告制作・配信

今回の記事では、ニュースアプリなどを手がけるGunosyの子会社における不正な広告制作・配信問題を事例に、特別調査委員会(第三者委員会)の活動スケジュールや調査の概要をご説明します。

問題の背景

本件は、Gunosyの連結子会社digwell社において、不正な広告制作や法令に違反する可能性のある広告配信が行われた問題です。

本件における第三者委員会の役割と委員選定のポイント

本件の第三者委員会の役割と委員選定

本件を調査した特別調査委員会(第三者委員会)は、事実経緯の調査や発生原因の究明、再発防止策の提言を目的に調査を実施しました。

具体的な調査は、以下にあげた3名の委員により実施されました。なお下記3名の委員は、Gunosyおよび子会社と特別な利害関係を有していないとのことです。特別調査委員会という名称が用いられているものの、実際には「第三者委員会」と同じ役割を果たしたと言えます。よってこの記事では、第三者委員会として説明を進めます。

第三者委員会の活動スケジュール

問題の発端となったのは、2020年3月17日に一部報道機関によって、Gunosyの子会社(digwell社)にて、法令違反の疑いがある広告が制作・配信されていた旨が報道されたことです。

この報道を受けてGunosyは、自社が管理するネットワークにおける広告配信を即日停止し、一次的な社内調査を実施すると同時に、不適切であると考えられる記事の削除や、配信対象となる広告内容の審査マニュアルの運用変更、審査体制の刷新を順次行いました。

その後同社では、さらなる調査の必要性について社内協議を重ねていました。そのタイミングで、公的機関から本件の経緯を報告するように要請がなされました。

これを受けてGunosyは、2020年4月22日に第三者委員会を設置し、事実解明や再発防止策の提言に取り組むようになりました。新型コロナウイルスの影響で調査に約5ヶ月という時間を要したものの、同年9月29日に調査が完了し、10月8日に調査報告書が公開されました。問題発覚から調査完了までの経緯をまとめると以下の通りです。

本件の調査のポイント

本件調査のポイントは、新型コロナウイルスの影響で通常とは異なる対応が求められた点です。新型コロナウイルスの感染を防ぐ必要性があったため、対面での資料収集やインタビューなどは困難でした。

そこで第三者委員会は、Web会議や電子メール、電話等によりオンラインで関係者へのインタビューを行いました。十分な資料を収集できないなどの制約はあったものの、コロナ禍という状況を踏まえると最善を尽くしたと言えるでしょう。

第三者委員会によって何がわかったのか

第三者委員会の調査により判明した事項

第三者委員会の調査により、「不正な広告の制作」と「不正な広告の配信」という2つの問題に関する詳細が判明しました。

まず不正広告の制作に関しては、2017年10月頃から2018年9月頃に行われていたことが判明しました。具体的には、広告関連の法令に抵触する可能性がある下記4種類の広告記事を作成してたとのことです。

なおその後も、売り上げの獲得を目的に、一部の従業員は不正な広告記事の作成を続けていたとのことです。

一方で不正広告は、Gunosy社のアドネットワークにおける広告審査の基準に問題があったことが判明しました。広告審査の基準が2018年以降順次緩和されたことで、広告関連法令に違反している記事(商品の効果を保証するような表現が多用された記事)が配信されていたとのことです。

第三者委員会の調査によって生じた費用・影響

問題発覚から時間が経過していないなどの理由により、本件の調査にかかった費用や業績への影響は明らかとなっていません。

ただし、本件問題が報道された3月17日の終値が853円だった一方で、2日後の19日には終値が812円まで下落しています。100%影響しているとは言えないものの、同社に対する投資家の不信感が株価の下落に反映されたと考えられます。

根本的な原因

第三者委員会の調査報告書では、本件の根本的な原因として下記の項目が指摘されています。

法令に反する広告作成・配信がレギュレーションや審査基準に規定されていない事実などを踏まえると、法令やコンプライアンス意識に欠けていた点は否定できないでしょう。今後再発を防止するには、まずは役職員が法令・コンプライアンスに対する意識を向上させ、知識を習得することが不可欠と言えます。

Gunosy子会社の不正な広告制作・配信における第三者委員会の解説:まとめ

本件の問題は、報道機関でも大きく取り上げられるなど、大きな話題となりました。コロナ禍ではあったものの、関心度の高い問題の事実解明に努めた点は素晴らしいと言えます。

第三者委員会の調査をめぐっては、コロナのみならず様々な制約が存在します(経営陣の協力を得られないなど)。そうした制約下でも、できる限り事実を詳細に分析し、利害関係者の納得を得られる調査結果を公表することが、第三者委員会には求められるのです。

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