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証拠があっても無罪?違法収集証拠とは

Attorneys or lawyers are advising clients in defamation cases, they are collecting evidence to bring charges against the parties for damages. The concept of defamation case counseling.

証拠があるのに無罪に?

被告人が罪を犯した決定的な証拠があるのに被告人が無罪になる場合があることをご存じでしょうか。「そんな悪い奴なのになんで無罪にするんだ!とんでもない!」と考えるかもしれませんが、実はこれには深いワケがあります。今回は、この違法収集証拠について解説していきます。

違法な手続きで入手した証拠は使えない

刑事訴訟法には違法収集証拠排除法則という原則があります。簡単にいうと、違法な手続き(違法な逮捕や取調べなど)によって入手した証拠は、使用してはいけないという法則です。つまり、警察が何ら法的根拠に基づかず、突然犯人を羽交い絞めにしてポケットから無理矢理覚せい剤を取り上げるというような無茶苦茶なことをすると、その覚せい剤を証拠として使うことができなくなります。そのため、このケースで覚せい剤以外に新たな証拠がでてこない場合には犯人は無罪となります。

覚せい剤を持っていても無罪?!その理由とは・・・

覚せい剤を持っていることは明らかなのだから無罪にするのはおかしいと思うかもしれません。しかし、刑事裁判は検察官と被告人の1対1の戦いです。いってしまえば、ボクシングで、素手ではなく武器をこっそり利用して相手をKOさせた場合には、相手はKOしているけれども、ルールを破って武器を使った人をルール違反で負けにすることと近いと言えるでしょう。1対1の戦いである以上、刑事訴訟法というルールを守って、お互い真摯に戦う必要があります。

そもそも被告人は悪い人?

これを聞くと、「裁判はボクシングとは違う!被告人は悪い人だから検察官の多少のルール違反くらいいいじゃないか!」と考える人もいることでしょう。これは「被告人は悪い人」という前提に大きな間違いがあります。

被告人は裁判で刑が確定するまで、無罪である人として扱われます。たしかに、罪を犯した疑いがあるから裁判を受けています。しかし、疑いがあるだけで被告人を悪者として不利な立場におくことはあまりにかわいそうだといえます。もし、あなたが普段通り生活していたのにたまたま犯罪をしたように見えてしまったからといって国民からノケモノにされたらいたたまれないでしょう。

ましてや、そのせいで、罰金や懲役、さらには死刑にされてしまうこともあります。国民の財産、身体、命は非常に大切です。裁判で何ら法的な根拠に基づかず、国にいきなり財産、身体、命をうばわれることは絶対に避けなければなりません。

違法収集証拠排除法則はなぜ必要?

先ほど、ルールに違反して証拠を取得した場合にはその証拠を使ってはいけないようにすることが違法収集証拠排除法則だと説明しました。

では、そもそもなぜルールを違反してはいけないのでしょうか。あたりまえの問題にみえて意外と深い問題です。

そのポイントは以下の3点にあります。

①将来の違法捜査抑止

まず、ルールの違反を許したら、同じようにルールを破る人がでてきます。つまり、ある警察官が何ら法的な根拠なく被疑者の家にこっそり入って、タンスの中に入っていた覚せい剤を取ったとします。警察官であっても、法的な根拠なく家に入る行為は、住居侵入罪になりますし、これを絶対に許してはいけません。しかし、このような捜査を許容した場合には、マネをする警察官が増えることでしょう。そのため、いくら証拠を取得するためだといっても、将来の違法捜査抑止の観点から違法収集証拠を排除する必要があります。

②司法の廉潔(れんけつ)性

次に、裁判所は正義を貫いて、法律上正しい判断をする主体です。そのような裁判所が、刑事訴訟法という法律に違反した捜査を許容したら、裁判所に対する国民の信頼がなくなります。ルールを無視した裁判所なんて到底信用できません。そのため、裁判所への信頼確保、つまり司法の廉潔性を維持するために違法収集証拠は排除しなければなりません。

③被告人の人権保障

先ほど述べた通り、被告人は刑が決まるまで無罪です。法的な観点からみると捜査や裁判の段階では、まだ悪い人ではないのです。なにもない人に警察官がルールを無視して横暴な行為をし、被告人の人権を侵害することは決して許されません。さらにそのような横暴によって刑を受ける事態になることは絶対に避けるべきです。そのため、被告人の人権を保障するためにも、違法収集証拠は排除されます。

違法収集証拠となった判例

違法収集証拠として排除された具体例として平成15年2月14日の判例をご紹介します。

この事案では、逮捕状なしに被告人を逮捕した後、連行先で採尿をしたところ、覚せい剤が検出されたため、覚せい剤所持の疑いで起訴されました。そこで、尿検査の鑑定書を証拠として使えるかという点が問題になりました。

刑事訴訟法では、現行犯ではない限り、基本的に逮捕状がないと逮捕をすることができません。この事件では、逮捕状がないのにもかかわらず、警察官3人が被疑者を追いかけまわし、最終的に手錠をかけられ捕獲用のロープで拘束されました。そのまま無理やりパトカーに乗せて、警察署内で尿検査をしました。しまいには、警察官は3人そろって、逮捕状をみせたなどという嘘までつきました。

これはあまりにルール違反の度合いが強かったため、裁判所はこの逮捕と逮捕によってえられた尿の鑑定書の証拠能力を否定しました。

まとめ

刑事訴訟では正義を実現するための1対1の戦いがルールに基づいて繰り広げられています。ルールに違反してしまった場合には、たとえ検察官であってもルール違反に対する責任を取ることとなります。刑事訴訟では、公平に正義を実現するためにこのようなルールがたくさん設定されていますので、いざという時のために覚えておいてください。

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