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イーロン・マスクによるTwitter社の突然解雇は違法?労働法との関係を解説

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2022年10月27日にTwitter社を買収したイーロン・マスク氏は、同社CEO就任と同時に取締役全員を解任し、約1週間後の11月4日には全従業員の半数ほど(約3700名)に解雇通告をしました。

このように突然、大量解雇(リストラ)をすることは違法とならないのでしょうか。主に日本における労働法との関係で、今回のリストラの法的問題を解説します。

今回のリストラは違法・無効の可能性が高い

イーロン・マスク氏によるTwitter社のリストラは、労働契約法16条に反し違法となる可能性が高いのではないかと考えることができます。

そもそも労働契約法とはどのような法律で、なぜ今回のリストラは違法となり得るのでしょうか。

労働契約法とは?

労働契約法は、個別の労働関係におけるルールを作り、労働者の保護と個別の労働関係の安定を図るべく制定された法律です。

労働契約法は2008年3月から施行され、2012年8月に一部が改正されました。

解雇は労働者に与える影響が大きく、解雇に関する紛争も増大しています。そこで労働契約法16条は解雇に関するルールをあらかじめ明らかにし、解雇に際して発生する紛争の防止・解決を図ります。

労働契約法16条
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

そのため、今回のリストラが労働契約法16条に反し違法であると判断された場合、解雇は無効となります。

しかし「客観的に合理的な理由」や「社会通念上相当」など、同条は抽象的な文言を用いており、これだけでは違法かどうかの判断が困難です。

整理解雇の4要件から違法性を判断

そこで、過去の労働法に関する判例から確立された整理解雇の4要件を考慮要素として、整理解雇の適法性を判断します。この要件に照らし合わせると、Twitter社のリストラは違法となる可能性が高いといえます。

①人員削減の必要性

整理解雇には経営上の理由により人員を削減する必要性が求められます。

例えば会社の赤字が続き、倒産寸前などの状態では人員を削減する必要性が高いといえます。一方、経営上の危機はないものの経営の合理化や生産性を向上させるための整理解雇は、人員削減の必要性が認められにくいといえます。

Twitter社の現金等資産は約3200億円であり、2021年の赤字は約330億円と報じられています。そのため、人員削減の必要性が認められる可能性は高いとはいえません。

②解雇回避義務を尽くしたこと

解雇は最終手段であり、可能な限り行われるべきではありません。そのため、人員削減の必要性があっても、解雇を避けるための手段を会社が講じ、さまざまな努力をすることが求められます。

解雇を回避する手段としては、希望退職者の募集、ボーナス減額・不支給、役員報酬の減額、配置転換などが挙げられます。

Twitter社のリストラ前にどのような解雇回避の手段が講じられていたかは、現在明らかになっていません。

③解雇対象者選定の合理性

解雇の対象者を選定する基準が客観的に合理的かつ公平であることが必要です。

一般的には、勤続年数や勤務成績、扶養家族の有無や数を考慮した解雇によるダメージなどを基準にすべきであるとされます。責任感や協調性などの抽象的な基準は、合理的かつ公平とは評価し難いとされます。

Twitter社の今回のリストラは社員の約半数を対象とする大規模なもので、上記のような合理的かつ公平な基準に従っているかは明らかではありません。

④解雇手続の妥当性

上記の要件を満たしていても、会社が解雇について従業員などと十分に協議し、整理解雇について納得を得るための説明などを尽くしていなければ適法な整理解雇といえません。

Twitter社はイーロン・マスク氏による買収の約1週間後、役員の解任直後に解雇通告を行っています。そのため、整理解雇について十分な協議や説明が行われていた可能性は低いと考えられます。

以上のように、今回のリストラは整理解雇の4要件を満たす可能性が低く、労働契約法16条に反し無効となるおそれが高いと考えられます。

整理解雇の有効性が問題となった事例

Twitter社のリストラ以前にも、整理解雇の有効性が争われた事例があります。以下では、異なる結論となった2つの事例を紹介します。

日本航空による整理解雇

・事実の概要

2010年に経営破綻した日本航空(JAL)は、会社更生手続中にパイロット81名と客室乗務員84名を整理解雇の対象としました。

これを受けて、同社のパイロット及び客室乗務員が解雇の無効を求め、訴訟を提起しました。

・結果

裁判所は、パイロットと客室乗務員のいずれに関しても、整理解雇の4要件を満たすとして、労働契約法16条に反せず有効であると判断しました。

特に③解雇対象者選定の合理性について、病気欠勤者の企業貢献度を低く評価した人選基準が合理性か争われましたが、裁判所はこれを合理的であると示しました。

観光バス会社による運転手の整理解雇

・事実の概要

主に貸し切り観光バス事業を営む福岡県の会社は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で海外からの観光客が激減し売り上げが低下していることから、運転手3名の整理解雇を決定しました。

そこで、解雇の対象となった運転手は、雇用関係の確認と未払い賃金の支払いを求めた仮処分の申立てを行いました。

・結果

裁判所は、整理解雇の4要件に従い、①人員削減の必要性は一応認めたものの、それ以外の要件を満たさないとして、上記整理解雇は労働契約法16条に反し無効であると示しました。

その上で裁判所は、会社に対し、原告の従業員への月約18万5000円の支払いを命じました。

解雇の種類

整理解雇の4要件を紹介しましたが、整理解雇とは解雇の種類のうちの1つです。

解雇には3種類があり、そのうち今回のTwitter社のリストラは整理解雇に当たります。

普通解雇

普通解雇には、整理解雇や懲戒解雇以外の解雇が当たります。健康状態の悪化や業務命令違反などが普通解雇の理由とることが多いです。

通常は就業規則に普通解雇の理由が列挙されています。

整理解雇

整理解雇は、会社の経営不振の解決や経営の合理化のため、人員削減を目的とした解雇で、リストラの一環といえます。

広義では普通解雇に属します。

懲戒解雇

懲戒解雇は、労働者が犯罪や経歴詐称など重大な規律違反を行った場合に行われる制裁としての解雇です。

普通解雇に比べて厳しく有効性が判断されます。

Twitter社の今後

解雇の有効性が問題となっているTwitter社は、今回のリストラが無効となった場合どのような対応をすることになるのでしょうか。

外資系企業でも日本の法律が適用され得る

Twitterはアメリカ合衆国カリフォルニア州に本社を置く外資系企業です。しかし、日本の事業所で勤務している従業員については原則日本の法律が適用されることが多いため、前述のとおり労働契約法16条に反する場合には、リストラは無効となります。

リストラが無効となった場合

解雇された従業員が訴訟を提起し、リストラが無効であると裁判所に判断された場合、労働者としての地位は継続し、従業員は復職や未払賃金の請求をすることが考えられます。

もっとも、イーロン・マスク氏は11月4日、解雇された全員に対し法定の金額より50%高い退職金を支払うと自身のTwitterに投稿しています。

解雇された従業員がどのような行動をとるかによって、Twitter社の対応は異なるでしょう。

まとめ

・イーロン・マスク氏によるTwitter社のリストラは、日本においては労働契約法16条に違反し、無効となる可能性が高いといえます。

・整理解雇が労働契約法16条に違反し無効となるかどうかは、整理解雇の4要件に従い判断される場合が多いです。

・整理解雇をする場合は、整理解雇の4要件を満たすかどうかを事前に確認する必要があります。

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