知的財産権の中でも、特許権と並んでビジネスで馴染みあるのが「商標権」です。今回の記事では、商標権の登録要件や取得手続きを徹底解説します。
商標権とは
商標権とは、商標(自社の商品・サービスを他社のものと区別する目的で使用するマーク等)について、使用者が行使できる権利の総称です。
商標法第2条では、文字や図形、記号、立体的形状、色彩、音などを商標権の保護対象として定めています。たとえば企業のロゴやキャラクターなどが商標に該当します。
商標権を取得するメリット
商標権を取得すると、事業者は下記3つのメリットを得られます。
- 登録した商標を独占的に利用できる(他社に使用される事態を防げる)
- ライセンス契約を締結し、収入源を確保できる
- 自社のブランディングに商標を活用できる
商標権の存続期間
商標法第19条では、商標権の存続期間を「設定登録の日付から10年間」と定めています。ただし、商標法第20条の規定により、更新登録を行うことで半永続的に商標権を持ち続けることが可能です。
商標権の登録要件
商標権の登録要件は、大きく下記3つに大別されます。
自他商品・役務識別力がある
商標権を登録を受けるには、自他商品・役務識別力があることが絶対の要件となります。自他商品・役務識別力とは、簡単にいうと「商標を用いることで、自分の商品・サービスと他社のものを区別できること」を意味します。
商標法第3条によると、主に下記のケースに該当すると識別力がないと判断され、商標権の登録は受けることができません。
- 対象商品・サービスの普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみから構成されている(例.「時計」という名称のロゴ)
- その商品・サービスについて慣用されている(例.「観光ホテル」という名称のロゴ)
- 単純に商品の産地や品質、原材料などのみを表示する(例.「高級牛肉」という名称のロゴ)
- ありふれた氏名または名称を普通の方法で表示する標章のみから構成されている(例.「佐藤」という名称のロゴ)
- 極めて簡単かつありふれた標章のみで構成されている(例.「123」という名称のロゴ)
ただし、実際に使用された結果、「誰が提供している商品・サービスであるか」を利用者が認識できるようになった商標に関しては、登録が認められます。
公共性に反していない
商標法第4条の規定により、公共性に反している商標は商標権の登録を受けられません。具体的には、主に以下のケースに該当する商標は、公共性に反していると判断されます。
- 国旗や勲章、菊花紋章、褒章、外国国旗、赤十字の標章と同一・類似の商標
- 国や地方公共団体等を表示する標章のうち、著名なものと同一・類似の商標
- 公序良俗に反する商標
- 商品やサービスの品質の誤認を生じさせる可能性がある商標(牛肉について「◯◯豚肉」という表現を用いているなど)
他人の登録商標や周知・著名商標などと紛らわしくない
同じく第4条の規定により、他人の登録商標や周知・著名商標などと紛らわしい商標に関しては、商標権の登録が認められません。
紛らわしいかどうかは、商標の「見た目」、「意味」、「呼び方」の3要素で総合的に判断します。たとえば「〇〇キング」という名称で商標が登録されている場合、「〇〇王(〇〇の部分は同じ)」という名称では商標権を登録できない可能性が高いと考えられます。
商標権の取得手続き
商標権の取得に際しては、下記4つの手順を経ます。
手順1:出願
商標権を取得するには、はじめに出願手続きを行う必要があります。出願の手続きでは、以下の書類を揃えた上で特許庁長官に提出します。
- 願書(出願人の氏名・名称や住所居所、商標、指定商品・サービスの区分、立体や音などの特殊な商標の場合はその旨など)
- 図面など(任意)
手順2:方式審査・実体審査
出願が終わると、方式審査と実体審査という2種類の審査が行われます。方式審査では「書面の不備や不足の有無」、実体審査では「登録要件を満たしているかどうか」が審査されます。
なお意匠権などと同様に、要件を満たしていないと、登録が不可である理由が記された「拒絶理由通知書」が送付されます。この場合、意見書を提出することで、拒絶理由への反論が可能です。
手順3:出願公開
特許と同様に、商標権には出願公開制度があります。商標法第12条の2の規定により、出願があった時点で商標の概要や出願人の氏名や住所などが商標公報に掲載されます。
手順4:商標登録査定・設定登録
出願した商標に問題がなければ、「登録査定謄本」が送付されます。その後登録料を納付すれば、正式に商標権が登録されます。
商標権とは?:まとめ
他の知的財産権と同様に、特許権はビジネスにおける利益を守る上で重要な権利です。特に特許権は、自社のブランディングにも役立つ点でメリットが大きいです。
取得する方法は他の知的財産権と大きな違いはないので、特徴的なロゴや名称を用いている場合には、積極的に商標権を取得・活用しましょう。
参考:商標法 e-Gov
参考:商標制度の概要 特許庁