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契約書・覚書・念書の違いとは?

契約書・覚書・念書 の違い

商取引において契約書の役割は非常に重要です。契約書を締結することで、双方の合意事項が明文化され、大きな取引も安心して進めることができるからです。この記事では、契約書とは、どういった特性のある書類であるのかを押さえたうえで、類似する覚書や念書との違いについて解説をしていきます。

契約書とは?

覚書や念書との違いを知るために、まず契約書の特性について押さえていきましょう。

なぜ契約書を締結するのか

契約とは、ひとつの約束事です。一方が代金の支払いをして、相手方が商品の引き渡しを実行するのも契約に基づく行為です。

ただし一般的な現金購入を始めとする個人取引では、契約書を締結することなく進められます。日本においては、法令の定めのない限り契約の際に書面の作成を要さないことが原則とされているからです。これは「不要式契約」と呼ばれ、民法で次のように定められています。

「契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示に対して相手方が承諾をしたときに成立する。(第522条第1項)」

「契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。(同条第2項)」

ところが、会社間の取引においては、契約書の締結が基本になります。口頭による契約ではなく、あえて契約書を締結するのは、主に次のような理由によります。

これらの事項は口頭の約束では、とうてい補うことができません。特に大口の商取引に際しては、権利と義務を明文化することで、安心して取引が進められるのです。

契約は法律で規定されている

契約に際して契約書を締結するもうひとつの理由として、契約という行為が法律で規定されているという要因があります。法的な縛りがあるため、契約書を締結することで民事上の争いを回避しようとしているのです。

民法やその他の法律で規定されている契約を「典型契約」と呼びますが、このうち民法(第549~696条)に規定されている契約は次の13種類です。ここでは民法の条文を基本にして補足説明を加えます。

  1. 贈与……財産を無償で相手方に与える意思を表示した契約です。
  2. 売買……財産権を有償で相手方に移転する契約です。
  3. 交換……物々交換に関する契約です。
  4. 消費貸借……将来同じ物を返還することを約束して相手方から金銭やその他の物を受け取る契約です。
  5. 使用貸借……相手方から受け取った物品を無償で使用して後に返還をすることを約束する契約です。
  6. 賃貸借……賃貸マンションやレンタカーのように、ある物の使用に対して賃料を支払うことを約束する契約です。
  7. 雇用……当事者の一方が労働に従事することを約束し、相手方がこれに対して報酬を与えることを約束する契約です。
  8. 請負……当事者の一方がある仕事を完成することを約束し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約束する契約です。
  9. 委任……当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾する契約です。
  10. 寄託……当事者の一方がある物を保管することを相手方に委託し、相手方がこれを承諾する契約です。
  11. 組合……各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約束する契約です。
  12. 終身定期金……当事者の一方が、相手方などの死亡に至るまで定期的に金銭などを相手方などに給付することを約束する契約です。
  13. 和解……当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約束する契約です。

これらの典型契約は、約束を反故にされた場合の被害が甚大になるものについては、契約書を締結するのが一般的です。

契約書には収入印紙を貼る

経済取引に伴って契約書を作成した場合には、印紙税法の規定により印紙税が課税されます。対象となる契約書には、印紙税を納めた証として収入印紙を貼り付けます。

国税庁では、次の契約書が印紙税の対象になるとしています。

引用:国税庁『印紙税額の一覧表』

重要な契約書は実印が基本

民事訴訟法において「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する(第228条第4項)」と定められています。

この場合の押印は、実印、認印の種類は問いません。契約書においても、この規定が適用されますが、契約書に定められた事項が極めて重要であったり、代金が高額であったりする場合は、本人の意思を明確にするために双方が実印を押印します。

契約書は2通作成

契約書は、当方と相手方の二者で取り交されます。このため、同じ文面の契約書を2通作成して、双方が同じものを所持することで契約が成立します。

覚書とは

覚書は、契約書の補助的役割を担う場合に用いるものです。たとえば、契約書の修正や条項の追加をするようなケースが、これに該当します。

あるいは、実質的に契約書であるが、内容が「契約書」にそぐわないと思われる場合に「覚書」とすることがあります。また契約書を作成するに際して、それまでの協議で合意した事項を記録しておくために、覚書を交わすことがあります、

ただし、契約書と同じ手順を踏まえて締結したものは、契約書と同じ法的効力を持ちます。したがって、たとえタイトルを「覚書」としていても、実質的には契約書と見なされるため、取引対象によっては印紙税の課税対象になることがあります。

覚書は、当事者同士で法的拘束力を持たせる意思がないと認められる場合には、法的拘束力を有しません。この場合、書式についても厳密な決まりごとはありません。

覚書に法的拘束力を持たせたい場合には、覚書を締結する際に、契約書と同じ手続きを踏み、書面に「当事者の署名・捺印、締結日、合意した内容」を記載する必要があります。この場合、契約書とは別の合意文書として取り扱われるため、解除するときは、契約書とは別に覚書についても解除手続きを行います。

念書とは

念書は、守るべき事項を記載し、約束をした一方のみが署名、押印をして、相手方に提出する文書です。この点が、双方が署名、押印をして、同じ物を取り交す契約書や覚書と大きく異なる点です。

念書は、誓約書や顛末書に近い役割を担います。押印を実印にするか認印とするかは、念書を受取る側の考えによりますが、民事訴訟法では、「本人の署名または押印があるときは、真正に成立したものと推定する」とされており、サインまたは認印の押印があれば、法的には有効な書類として扱われます。

約束した事項については、契約書のような法的拘束力はありませんが、本人が作成し提出した文書であることは、揺るぎない事実であることから、約束が期限までに履行されず、裁判になった場合は、重要文書として扱われることになります。

契約書・覚書・念書の違いとは?:まとめ

契約書は、商取引を行う上で重要な役割を担います。契約書に記載された合意事項に法的拘束力があるからこそ、安心して取引を進められるのです。もし契約書に記載された事項を反故にすれば、重大なペナルティを背負うことになります。

覚書は、契約書の補助的役割を担うものです。覚書に対する法的拘束力の有無は、当事者間の意思が基本になります。法的拘束力のある覚書は、法的にも契約書と同じ扱いになるため、取引内容によっては印紙税が課せられることがあります。

念書は、一方的に相手方に提出する書類です。誓約書や顛末書と同等の性格を持ち、将来の行為について、相手方に約束を申し出るものです。

取引に際しては、実情に合った書類を作成して商談を進めていきましょう。

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