電話営業は、事業者にとって手軽に実施できるというメリットがあります。しかし、そこに一定のルールがあることを失念してはいけません。強引な手法で商品購入の勧誘をすると、違法行為を指摘されて、会社全体の評判を落とす事態にもなりかねないのです。この記事では、電話営業に関して法律上注意すべき7つの事項を取り上げて、詳しく解説をしていきます。
電話営業は特定商取引法の適用がある
訪問販売や通信販売のように事業者から営業を働きかける取引については、特定商取引法の適用を受けます。
電話営業についても、資格講座等の執拗で巧妙な電話勧誘が社会問題になったことから、1996年から訪問販売法の規制対象になり、現在の特定商取引法に引き継がれています。
特定商取引法において、電話営業は「電話勧誘販売」として規制されています。電話勧誘販売とは、事業者が消費者の自宅や職場に電話をかけて商品を売り込み、その結果として消費者が電話・FAX・メール等の通信手段で購入を申し込む販売方法のことです。
電話営業は、事業者にとっては低コストで実施できる便利な営業手段です。一方、消費者の立場になれば、強引な営業トークによって納得がいかないまま契約を締結させられたと思うケースも少なくないため、トラブルが後を絶ちません。
このため特定商取引法では、電話営業に関する様々な規制を設けています。具体的にどのような規制があるのか、7つのポイントを取り上げて解説します。
なお本記事では、「商品の売買」として説明をしていきますが、この中には、「権利の売買」や「サービスの提供」も含まれることをご承知おきください。
1.まず氏名などを明かす
特定商取引法では、事業者が電話勧誘をする際は、勧誘に先立って、事業者の氏名や目的を明らかにするよう定めています(法第16条)。
事業者が電話営業をした場合に、明示する義務があるのは、次の事項です。
- 事業者の氏名または名称
- 勧誘を行うものの氏名
- 商品・権利・役務の種類
- この電話が勧誘を目的としていること
これらは、消費者が電話に応じたら最初に伝えるべき事項です。勧誘が目的であることを後回しにして、まるで関係のない世間話やアンケートなどを通じてコミュニケーションを図ったうえで勧誘をする行為は法律違反になります。
2. 勧誘の継続や再勧誘は禁止されている
特定商取引法では、電話営業で相手が売買契約をしない意思を示した場合、事業者はその契約について、さらに勧誘を続けたり、改めて勧誘の電話をしたりすることを禁じています(法第17条)。
契約を締結しない意思とは「興味がない」「必要としていない」「購入しません」といった商品への拒絶もちろんですが、「迷惑です」とか「もう電話はやめてください」といった電話勧誘自体への拒絶についても契約を締結しない意思表示と見なされます。
3.指定事項を記載した書面を交付する
電話営業で契約に至った場合、法律や省令で指定された事項が記載された書面を交付する義務が特定商取引法に定められています(法第18条)。
規定で定められた記載事項は次のようなものです。
- 商品の代金の支払時期と方法
- 商品の引渡時期
- クーリング・オフの行使について
- 事業者の連絡先及び代表者の氏名
- 担当者の氏名
- 契約の申し込みをした年月日または契約締結の年月日
- 商品の名称や型式
- 商品の数量
- 瑕疵担保責任及び契約解除に関する事項
- 特約を定めた場合はその事項
これらの事項は、8ポイント以上の大きさの文字を使って記載することとされています。
4. 電話営業では禁止行為がある
特定商取引法では、電話営業での禁止行為を定めています(法第21条)。
禁止行為は次のとおりです。
- 不実のことを告げる行為
- 故意に事実を告げない行為
- 脅迫によって締結させたり解約を妨げたりする行為
事実でないことを伝えたり事実を知らせなかったりしたことにより、事実を誤認して申し込みや承諾をした場合、消費者は、その意思表示を取り消すことができます。また消費者契約法第4条によって、申し込みや承諾の意思表示の取消しを請求することもできます。
5. 過料販売にならないよう使途を押さえる
電話営業では、日常生活で通常必要とされる分量・回数・期間を超える商品販売は禁止されています。過料販売が行われた場合、契約締結から1年以内であれば契約を解除することができます(法第24条の2)。
過料販売は行政処分の対象になるので、事業者は大量注文を受けた場合は、使途をしっかりと押さえておく必要があります。
たとえば親戚や友人に配るといった事情で大量注文を受けた場合でも、後にトラブルになった際は、この経緯は事業者が証明をしなければいけません。このため、大量注文を受けた場合は、契約書や覚書に使途を記載するなどの工夫が必要になります。
6. 前払式電話勧誘販売では諾否等の書面を渡す
消費者が商品を受取る前に代金の一部または全額を支払うことを前提とした電話営業を「前払式電話勧誘販売」といいます。
前払式電話勧誘販売では、消費者は契約の履行について不安な状況になるため、特定商取引法では、事業者が代金受け取り後に遅滞なく商品の引き渡しが行えないときは、申し込みの諾否等に関する書面を渡す義務を課しています(法第20条)。
書面には次の事項を記載します。
- 申込承諾の有無
- 事業者の名称(氏名)、住所、電話番号
- 受領した金額と年月日
- 申し込みを受けた商品名と数量
- 申し込みを受けた商品名と数量
これらの事項については、8ポイント以上の大きさの文字で記載することとされています。
7. クーリング・オフ制度がある
訪問販売によるクーリング・オフ制度は、比較的広く知られるようになりましたが、電話営業においても、予期せぬ勧誘によってうっかり契約をしてしまいかねない販売形態であることから、クーリング・オフ制度が適用されます(法第24条)。
電話営業によるクーリング・オフ制度は、法定の書面を受取った日から8日以内であれば、消費者は事業者に対して、書面により申込みの撤回や契約の解除ができるというものです。
クーリング・オフに対する対応
クーリング・オフが成立すると、次のような対応をすることになります。
- 消費者に違約金は発生しない
- クーリング・オフに伴う商品の引取費用は事業者負担になる
- クーリング・オフ前に土地や工作物に手を加えられていた場合、消費者は無償での原状回復を請求できる
クーリング・オフの対象外になるもの
電話営業で購入した商品であっても、次に該当するものはクーリング・オフの対象にはなりません。
- 乗用自動車……乗用自動車の購入は、一度の電話で即断をすることはなく、交渉を重ねたうえで購入をするのが一般的であると考えられるので、クーリング・オフの対象にはなりません。
- 政令で指定された商品が使用された場合……化粧品や殺虫剤などの使用されたことによって商品価値が失われるものは、クーリング・オフの対象にはなりません。
- 代金が3,000円未満のもの
電話営業に関する法律で注意したいもの7選:まとめ
電話営業は容易に実施できる営業手段ですが、反面、相手の顔が見えないために、なかなか成果に結びつけることができません。功を急ぐあまり、つい過剰な営業トークを用いると、法令違反に問われることがありますから、常に特定商取引法を念頭においたうえで、勧誘を行う必要があります。
また、事実に基づかない説明をした場合、クーリング・オフの期間を過ぎた後でも契約の解除は有効です。電話営業では、商品を視認できないという難しさはありますが、消費者に誤解を与えるような、不明瞭な商品説明は厳に慎みましょう。