最近「スタートアップ」という言葉を頻繁に目にするようになりましたが、「スタートアップ」と「ベンチャー」の違いを説明できる方は意外と少ないのではないでしょうか。両者はよく混同されますが、実は異なる意味を持っています。
本記事では、両者の定義や相違点などについて、わかりやすく解説しています。
スタートアップとは
スタートアップとは、独自性のある新規ビジネスを短期間で展開するために設立された企業のことです。
スタートアップは、既存の製品やサービスの課題を解決したり、まったく新しい価値を提供したりすることで、既成概念を破壊するイノベーションを目指します。
<スタートアップ企業の例>
米国:Google・Amazon・Meta(旧:Facebook)・Apple
日本:Sansan・SmartHR・スマートニュース・メルカリ
ベンチャーとは
ベンチャーとは、既存のビジネスモデルをベースとして中長期的な成長を目指す企業のことです。
設立間もない企業やビジネスの規模が小さい企業、社員数が少ない企業などを広く「ベンチャー」ということもありますが、スタートアップとの区別のために、上記のような定義を押さえておきましょう。
スタートアップとベンチャーの違い
以下の表は、スタートアップとベンチャーの違いを整理したものです。
目的 | ビジネスモデル | 組織体制 | |
スタートアップ | EXIT | 新規 | 即戦力が多数 |
ベンチャー | 安定収益の獲得 | 既存 | 育成メンバーがいる |
目的
まず、スタートアップとベンチャーでは、その目的が異なります。
スタートアップは、新規ビジネスを短期間で成長させなければならないため、必ずベンチャーキャピタルなどから資金を調達します。そして、出資をしたベンチャーキャピタルは、いずれ出資額以上の利益を回収しなければなりません。そのため、スタートアップは、IPO(株式公開)やM&A(バイアウト)などによってEXIT(エグジット)*することを目的とします。
*EXIT・・・ベンチャーキャピタルや創業者などの出資者が、出資したスタートアップ企業から利益(リターン)を回収すること。
これに対して、ベンチャーは、中長期的な視点から、安定した収益の獲得を目的とします。
ビジネスモデル
スタートアップとベンチャーの最も大きな違いは、そのビジネスモデルにあります。
スタートアップは、イノベーションを起こす新しいビジネスモデルを試行錯誤しながら構築します。
これに対して、ベンチャーは、既存のビジネスモデルをベースとして、その収益性の改善や規模の拡大を目指します。
組織体制
スタートアップとベンチャーとでは、その目的の違いから、組織体制も異なってきます。
スタートアップは早期のEXITを目的としているため、少なくとも初期段階では即戦力となる人材のみで構成されるのが通常です。
これに対してベンチャーの場合は、中長期的な事業展開を想定しているため、即戦力メンバーのみならず、育成を前提として採用された人材も比較的多く存在します。
設立年数・社員数での区別は困難
スタートアップは短期的な急成長を、ベンチャーは中長期的な安定成長を目指していることから、「スタートアップはベンチャーよりも若い企業」と思われるかもしれません。しかし、実際には重複する部分が多く、両者を設立年数のみで区別することは困難です。
また、必要な社員数は扱うビジネスの性質によって様々であるため、社員数の観点からスタートアップとベンチャーを区別することも難しいといえます。
日本と海外の違い
日本における「スタートアップ」と、海外の「startup」や「startup company」とはほぼ同じ意味をもっています。
これに対して、日本の「ベンチャー」と海外の「venture」とは意味が異なるため、注意が必要です。日本の「ベンチャー」は資金を集めて実際にビジネスを展開する側の企業のことを指しますが、海外の「venture」は、「venture capital」のように、出資を行う側の企業のことを指します。
まとめ
スタートアップとベンチャーの最大の違いは、そのビジネスモデルにあります。スタートアップが革新的な新規ビジネスの展開を目指すのに対して、ベンチャーは既存のビジネスモデルをベースとします。
もっとも、この区別はあくまで日本においてのみ通用するものあり、日本の「ベンチャー」と海外の「venture」とは意味が異なるため、注意が必要です。