SDGsという用語を最近よく目にすることはありませんか。 SDGsとは、私達の社会を持続可能にするための世界共通の開発目標です。そう聞くと、何か日常の業務とは無縁のように思えますが、実はビジネスからも切り離せない課題なのです。世界的な企業の多くは、すでにSDGsの目標(ゴール)に向けてスタートを切っています。ビジネスチャンスを広げるために、SDGsについて理解を深めていきましょう。
SDGsとは何か
SDGsとは「Sustainable Development Goals」を略した用語で、直訳すれば「持続可能な開発目標」となります。2015年9月の国連で採択された2030年までの世界共通の開発目標です。先進国と途上国が一丸となって達成すべき普遍的なテーマとして17の目標(ゴール)が掲げられています。
なぜSDGsが必要なのか
世界は今、コロナウイルスの蔓延に苦しんでいます。そればかりか、飢餓や人権侵害、経済格差、気候変動など、様々な問題に直面しています。
これらの問題は、けっして他人事ではありません。ビジネスという視点に立てば、こうした問題を放置しつづければ、近い将来確実に企業の存続を脅かす存在となるのです。たとえば気候変動や環境破壊は、原材料となる資源を枯渇させ、さらに貧困の拡大を招くことになります。 SDGsが掲げた17の目標は、社会を持続させていくうえで障害となりうるリスクを解消するための課題を提示しているのです。
SDGsが掲げた17の目標とは
SDGsは、2030年以降も「持続可能な社会」を実現させ続けることを目指して、次の17の目標を掲げています。
- 貧困をなくす
- 飢餓をゼロに
- すべての人に健康と福祉を
- 質の高い教育をみんなに
- ジェンダー平等を実現しよう
- 安全な水とトイレを世界中に
- エネルギーをみんなに そしてクリーンに
- 働きがいも経済成長も
- 産業と技術革新の基盤をつくろう
- 人や国の不平等をなくそう
- 住み続けられるまちづくりを
- つくる責任つかう責任
- 気候変動に具体的な対策を
- 海の豊かさを守ろう
- 陸の豊かさも守ろう
- 平和と公正をすべての人に
- パートナーシップで目標を達成しよう
SDGsが掲げたこの17の目標は、テーマごとに次の「5つのP」に分類することで、目指すべき世界が明瞭になります。
- People (人間)
- Prosperity(繁栄)
- Planet(地球)
- Peace(平和)
- Partnership(パートナーシップ)
People (人間)
目標1.2.3.4.5.6
誰もが尊厳と平等の下に、そして健康な環境の下に、持てる能力を発揮することができる世界の実現を目指しています。世界中の人々が幸せに暮らすためには、貧困や飢えに苦しむ人々の問題を解決しなければなりません。
Prosperity(繁栄)
目標7.8.9.10.11
世界中のどこにいても、豊かさと安全・安心を実感して暮らせる世界を目指しています。そのためには国や地域内の格差をなくさなければなりません。また、経済の成長とともに豊かな自然環境を維持していくことも重要です。再生可能な自然エネルギーの使用を推進は、欠かすことのできない要件となります。
Planet(地球)
目標12.13.14.15
大量生産・大量消費の社会から脱却して、限りある資源を守り、自然からの恵みを受けることができる世界を目指しています。そのためには、絶滅の危機にある動物や植物の保護や自然災害をもたらす温暖化を防止する対策が重要です。
Peace(平和)
目標16
世界には、今も戦争や紛争で苦しむ人が大勢います。貧困や飢餓、人権侵害、環境破壊などを引き起こし、さらに人々の安心を奪う紛争をなくし、平和で公正な世界を実現することを目指しています。
Partnership(パートナーシップ)
目標17
世界を取り巻く様々な問題を、あらゆる人の参加と協力によって解決していくことを目指しています。国、企業、地域、団体、家庭の中で、ひとりひとりが協力体制を強化することが大切です。
SDGsの目標達成に企業はどう関わるべきか
SDGsの目標達成は、けっしてビジネスと無関係ではありません。むしろ企業を持続させるためには、積極的に関わっていくべきことなのです。SDGsの目標達成になぜ企業が関わらなければいけないのか。またどのように関わるべきなのかを解説していきましょう。
ビジネスの成長を阻むESG問題
かつてのビジネス手法は、大量生産、大量消費、大量廃棄を基本としたため、莫大な資源を必要としてきました。その結果、大気汚染、資源の枯渇、気候変動による自然災害の多発化などが進み、環境問題 (E)が深刻化しました。
また企業の競争環境の激化によって経済格差や人権侵害、社会的狙立、少子化などが進み、社会問題(S)が深刻化しました。
これらの問題は、企業の経済活動に起因する問題であり、企業の組織統治(G) を基点として発生したものです。 ESG問題の多くは法的問題や企業倫理の問題に関わっています。そのためESG問題の発生源となった企業は、法的、社会的制裁を受けるリスクが増加します。それは同時に、企業がSDGs が掲げる目標とは真逆の道を歩んでいることと同義となるのです。
SDGsは企業を持続可能にする
SDGsは「持続可能な社会」を目指しています。それは、あらゆる個人や家族、企業を持続可能にすることを意味しています。
私達の世界は、今コロナウイルスの蔓延に苦しんでいます。そればかりか、飢餓や人権侵害、経済格差、気候変動など、様々な問題に直面しています。これらの問題は、どれも深刻なものばかりです。
しかも収束の兆しは、いっこうに見えないどころか、拡大の様相すらみせています。このような世界では、いくら財産を残しても、家族が望む快適で安全な生活環境は保障されません。
相次ぐ自然災害は相続財産としての不動産の経済的価値と安定的な利用を脅かしています。風水害による土砂崩れや 浸水被害はその典型例です。また、コロナウイルスの蔓延により、今まさに消費活動が停滞していることは周知の事実です。
あるいは身近な問題として、マイクロプラスチックによる海洋汚染問題があります。今も毎年800万トン以上のプラスチックが海に流れ込んでいます。その一部は紫外線・海流・波で、マイクロプラスチックと呼ばれる細かい破片となり、海洋を汚染する大きな原因となっているのです。
そのため、世界中で、脱プラスチックの動きが加速しており、世界規模で、プラスチックストローやカップの使用をやめる企業が増加しています。
ESG問題の深刻化やSDGsの登場によって、顧客ニーズは、単に価格面のメリットだけでなく、社会的な貢献が高い製品やサービスを積極的に求める質的な変化を見せているのです。
こうした潮流に対応するには、SDGsの時代に適した経営体制になっているかどうかの検証と具体的な対応策を講じることが重要になります。販売店のレジ袋の廃止などは、自社から生じる環境負荷を把握して対策を講じた、もっとも基本的なSDGs の実践のひとつといえるでしょう。 自社の部門ごとの業務フローを洗い出し、そこから生じる環境負荷を定期的にチェックするとともに、継続的な環境負荷の改善に取り組むことでSDGs の目標に近づくことになります。
SDGsはパフォーマンスでは通用しない
経営者や取締役の地位にある人の多くは、国際的な視点を適切に学ぶことができない環境で育ったという問題があります。つまり経営陣の資質がSDGsの目標達成を阻害する要因になっているかもしれないのです。
「男尊女卑の価値観で円滑なコミュニケーションがとれる」「障害者などの弱者の存在は面倒な問題であるJ 「災害は自分に被害がない限り関心がない」といった考え方や行動が定着している人は、けっして少なくありません。こうした人が中枢にいる企業が、いくら社外にヒューマニズムに溢れたメッセージを発信したところで、最終的に大いなる失望を招くだけです。
SDGsが登場して、すでに5年以上の歳月がたちましたが、経営者によるセクハラ、パワハラ問題、知的障害者への最低賃金を下回る給料の支払い、不法投棄を前提で産業廃棄物の処理を受注するといったSDGs の趣旨に反する行動をする企業は後を絶ちません。SDGsを対外的なパフォーマンスとして捉える古い風潮を一掃した、企業中枢部の意識改革こそが、SDGsの目標達成に近づき、ひいては持続可能な企業への変貌を遂げることができるのです。
持続可能な開発目標 SDGsとは:まとめ
SDGsは、2015年に国連で採択された2030年までの世界共通の開発目標です。17の目標(ゴール)から構成され、地球上の「誰一人取り残さない」ことを誓った、先進国と途上国が一丸となって達成すべき普遍的な課題です。
SDGsが掲げたこの17の目標は、世界中のどこにいても、豊かさと安全・安心を実感して暮らせる世界を目指しています。そのためには国や地域内の格差をなくさなければなりません。また、経済の成長とともに豊かな自然環境を維持していくことも重要です。そしてなにより、紛争のない世界にしないことには、実現は不可能なのです。
一般企業においても、SDGsが掲げる目標と乖離した経営をしていると、短期的に利益を得たとしても、やがて持続することが困難になるリスクがあります。
実際の動きとして、Appleは、製造パートナー110社以上がApple製品の製造に使用する電力を100%再生可能エネルギーに振り替えていくことを発表しました。同社は2030年までに、この目的を達成することを目指しています。SDGsを軽視する企業は、やがて大きな取引先を失う現実が目の前に迫っているのです。