ビジネスを円滑に進める目的で、取引先や顧客に飲食などの接待を行うことは、あらゆる業種・地域で当たり前のように行われています。ビジネスでは一般的ですが、公務員に対する接待には禁止事項は多く注意が必要です。
今回の記事では、公務員に対する接待がどこまで許されているかを解説します。公務員への接待を検討している方は参考にしてください。
「国家公務員倫理規程」によって公務員への接待は禁止されている
国家公務員に対する接待は、「国家公務員倫理規程」という法律で厳しく規制されています。
たとえば利害関係がある相手から国家公務員が贈与などを受けると、公務員の職務遂行に関する公正性が薄れてしまい、国民の疑惑や不信を招きます。そこで、公務に対する国民からの信頼を確保する目的で国家公務員倫理規程が制定されたのです。
国家公務員倫理規程における接待の規制に関する概要
同法律では、国家公務員が職務上の利害関係を有する人物から、金銭・物品の贈与や接待を受けることを禁止しています。あくまで利害関係者による接待を禁止しているため、利害関係者でない者(友人など)から香典を受け取る等の行為は規制の対象外となっています。
地方公務員についても国家公務員と同様に規制されている
国家公務員倫理規程では、国家公務員が接待を受けることを禁止するのみであり、地方公務員に関しては定めていません。ただしほとんどの自治体では、国家公務員倫理規程と同じような規定を設けています。
したがって、地方公務員に対して利害関係者が行う接待も、基本的には禁止されていると考えて問題ありません。
利害関係者とは
国家公務員倫理規程における「利害関係者」とは、その公務員が担当している下記業務の相手のことを意味します。ただし例外的に、同一の省庁内にいる公務員同士については、基本的に利害関係者にならないとされています。
- 許認可等の申請を考えている者、申請者、許認可を受けている者
- 補助金の申請を考えている者、申請者、補助金の交付を受けている者
- 立入検査、監査または監察を受ける者
- 不利益処分の名あて人となる者
- 行政指導によって、一定の作為・不作為を求められている者
- 所管する業界で事業を運営する企業
- 契約の申し込みを考えている者、申込者、契約を締結して債権・債務関係にある者
- 予算や級別定数または定員の査定を受ける国の機関
なお、現時点で関わっていなくても、過去3年間に在職したポストの利害関係者については、異動後3年間も引き続き利害関係者とみなされますので注意しましょう。
利害関係者との間で禁止されている接待の内容
国家公務員倫理規程では、利害関係者が以下の接待内容を国家公務員に行うことを禁止しています。公務員に対する接待を行う際には、以下の行為に該当していないかを慎重に確認しましょう。
- 金銭、物品又は不動産の贈与
- 金銭の貸付け
- 無償による物品または不動産の貸付け
- 無償によるサービスの提供
- 未公開株式の譲渡
- 供応接待
- 一緒に旅行やゴルフ・遊技(麻雀など)を行うこと
- 第三者に上記1〜7の行為を公務員に対して行わせること
上記に関連して、「割り勘であってもゴルフや旅行などを行ってはならない点」にも十分な注意が必要です。
利害関係者との間であっても認められる接待とは
上記のとおり、利害関係がある公務員に対しては、基本的に接待を行うことは認められません。ただし例外的に、利害関係がある公務員であっても、認められている接待行為もあります。
具体的には、主に以下4つの接待行為が例外的に認められています。
多数の者が出席する立食パーティーでの飲食物の提供
20名程度以上が出席する立食パーティーであれば、ご自身の負担で公務員に対して飲食物を提供できます。一定以上の人数であれば、不正を働くことができないだろうという理由から、接待が許されていると言われています。
会議等での簡素なお菓子や飲み物などの提供
たとえば業務上必要な会議や講演等のあいだであれば、簡素なものに限り飲み物やお菓子などの提供が認められます。
記念用および宣伝用のノベルティの配布
会社の宣伝や創立◯周年記念などで配るノベルティについては、不特定多数の人に配ることを目的に作られているという観点から、利害関係がある公務員に配布することも認められています。
公的な性格を持つ儀礼的な会合での飲食物の提供
たとえば、国際的な賞の授賞式にともなう晩餐会などでは、飲食物を利害関係にある公務員に提供しても原則問題ないとされています。
公務員への接待はどこまで許される:まとめ
利害関係がある公務員への接待は、立食パーティーでの飲食物の提供や、ノベルティの配布など、最低限のものであれば許されています。ただし、金銭の贈与や割り勘でのゴルフなどは禁止されているため注意が必要です。