パーパスブランディングとは
近年「パーパスブランディング」という言葉が大きく取り上げられるようになっています。
ですがそもそも「パーパスブランディング」と言われても、いったい何か、通常の「ブランディング」とはどう違うのかなどはっきりと分からないことが多い方もいると思います。
この記事ではそんな方のために企業のブランディングのなかでも重要なパーパスブランディングについて述べていきたいと思います。
そもそもパーパスとは
パーパス(Purpose)の本来の意味は「目的」ですが、経営において「Purpose」は、「企業の存在意義」といった意味で、「パーパス経営」といった表現をされます。
2019年にビジネス・ラウンドテーブルというアメリカのロビー団体が、“Statement on the Purpose of a Corporation”(企業のパーパスに関する声明)を発表したことでにわかに注目を集め、同時期に高まったSDGsの機運の高まりと相まって一気に広がった概念です。
SONYやベネッセ、後述する富士通など大企業をはじめとする多くの企業が独自のパーパスを打ち出しています。
「パーパスブランディング」とは「パーパス」を使った「ブランディング」
パーパスは「企業の存在意義」ですので、長期的に企業が社会でどのようなスタンスを取るのかの表明に他なりません。
そこで、このようなパーパスを通じて、消費者や株主だけでなく従業員や取引先、周辺地域住民などすべてのステークホルダー(利害関係者)に対してスタンスを表明し、企業の認知度や消費者への共感度を高めることがパーパスブランディングです。
これにより、ブランディングに沿った企業のイメージが形成され、消費者が共感を覚えやすくなるほか、競合他社との違いを明確に打ち出すことが可能となります。
また、このパーパスブランディングを活用すれば、対外的なイメージ形成だけでなく、従業員や取引先いわば「企業側」の人々に対しても、事業の意義の周知や目指すべき方向性の統一を行うことができます。結果として企業のモチベーション維持にもつながることかもしれません。
・実践例
半導体メーカーのインテルは、「世界を変革する技術を創造し、地球上のあらゆる人々の生活を豊かにする」をパーパスとして掲げています。これらの取組みの一環として、オリンピックを目指すスポーツチームを組織し、東京オリンピック前には水泳の中村玲子氏や柔道の阿部詩選手を迎えています。これはインテルがオリンピックの体験向上に際してインテルが果たすスタンスを示す活動の一環で、パーパスに従ったブランディングといえます。
パーパスブランディングと知財
今までブランディングといえば「キャッチコピー」や「ロゴ」「ターゲット層の特定」などによって行われることが多かったと思います。これらのブランディングには「商標権」が深くかかわっています。
もちろんパーパスブランディングもブランディングの一種なので、知財意識が高い企業ではパーパスブランディングにも知財を活用している例もあります。
・タカラベルモント
化粧品や理容・美容機器の販売で知られるタカラベルモントは「美しい人生を、かなえよう。」をパーパスとして打ち出しました。
公式ホームページ内(https://www.takarabelmont.co.jp/100th/destinations/purpose/)ではパーパスに関するショートムービーが作られているほど力が入れられています。
「美しい人生を、かなえよう。」は商標として登録されており(登録6293621)、これらの言葉を法律上の権利として保護する意思を感じます。
・富士通
電機メーカーの富士通は「私たちは、イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていきます。」をパーパスとして打ち出しています。
公式ホームページ
(https://www.fujitsu.com/jp/about/businesspolicy/tech/intellectualproperty/purpose/#anc-01)では知財戦略を作成するにあたって自社のパーパスを「イノベーション」、「社会に信頼をもたらす」「持続可能な世界」という三つの視点にわけて、技術開発や社会貢献活動、知財政策活動などを実施しています。
上記の二社はパーパスブランディングだけでなくSDGsにも力を入れている共通点があります。
まとめ
以上のように、大企業をはじめとしてパーパスブランディング、特に既存のブランディングと融合した新機軸のブランディングが導入されています。
これらを見ているとこのような長期的視点をもつのは大企業特有の余裕があるからだと考える方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、このコロナ禍でより強く存在意義が問われているのはどの企業でも同じではないでしょうか。
パーパスブランディングには先ほど述べたような大きなメリットがあります。既存のブランディングと組み合わせて企業価値を様々な側面から高めていきませんか