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OEM契約とは?ODMとの違いや事例など企業が注意すべき法的リスクを解説

OEM-Original Equipment Manufacturer concept. Business model development that makes subsystems or parts used by other companies to make the end product. Support to reduce cost and production time.

近年締結の機会が増加しているOEM契約は、メリットがある一方で独占禁止法に違反するおそれがあります。

そこで、混同しやすいODM契約との違いを踏まえつつ、OEM契約とはどのようなものか、注意しなければならない法的問題について解説します。

後半では、OEM契約が独占禁止法に違反するかどうかが問題となる事例を紹介します。

OEM契約とは?

OEMとはOriginal Equipment Manufacturingの略で、他社ブランド製品の製造を受託する契約をいいます。

委託した企業からみると、他社に自社製品の製造を委託し、完成した物に自社の商標やロゴをつけた上で販売する契約であるといえます。

OEM契約のメリット・デメリットやライセンス契約との違い、OEM契約書に記載すべき事項などについては、以下の記事を参照してください。

OEM契約の記載事項について:https://legalsearch.jp/portal/column/what-is-an-oem-contract/

OEM契約の具体例

自動車業界ではOEM契約が多いといわれています。たとえばトヨタの「ピクシスメガ」として販売されている軽自動車は、ダイハツが製造をしているものです。

コンビニエンスストアやスーパーマーケットにおいて販売されているプライベートブランド(イオンの「トップバリュ」やセブン&アイの「セブンプレミアム」など)も、OEM契約に基づくものといえます。

大手小売店はメーカーに対し商品の生産を委託することにより、コスト削減ができます。また、メーカーは大手小売店のブランド力や知名度を生かして生産量を増加させることができます。

他には家電製品や化粧品、アパレルなど、様々な業界でOEM契約が活用されています。

ODM契約との違いは?

ODMとは、Original Design Manufacturingの略で、委託者のブランドで製品の設計から生産までを受託する契約をいいます。

OEM契約が製造委託(受託)であるのに対し、
ODM契約は設計と製造を委託(受託)する点において違いがあります。

つまり、ODMはOEMよりも委託(受託)する範囲が広いといえます。

OEM契約に関する法的問題

メリットのあるOEM契約ですが、場合によっては法律に違反するおそれがあるので注意が必要です。

独占禁止法との関係

たとえば、OEM契約が独占禁止法2条6項の「不当な取引制限」に当たる場合、同法3条後段に違反するおそれがあります。

独占禁止法2条6項
この法律において「不当な取引制限」とは、事業者が、契約、協定その他何らの名義をもつてするかを問わず、他の事業者と共同して対価を決定し、維持し、若しくは引き上げ、又は数量、技術、製品、設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう。
独占禁止法3条
事業者は、私的独占又は不当な取引制限をしてはならない。

独占禁止法の全体像についてはこちらの記事を参照してください。
https://legalsearch.jp/portal/column/abuse-of-a-superior-bargaining-position/

不当な取引制限とは?

不当な取引制限とは、複数の事業者によって行われる共同行為です。共同行為とは、独立した事業者どうしが共同して行うもので、カルテルや談合がこれに当たります。

2条6項によると、「不当な取引制限」とは、①事業者が、②共同して、③相互にその事業活動を拘束し、④一定の取引分野における競争を実質的に制限する行為のうち、⑤公共の利益に反しないものをいいます。

これをOEM契約についてみると、①メーカーなどの事業者が、②製造を委託する他社と共同して、③コスト削減などの共通目的を持ち、合意を遵守し合う関係にあり、④競争制限効果が競争促進効果を上回る場合、⑤消費者保護という独占禁止法の目的に実質的に反しないと認められない限り「不当な取引制限」に当たるといえます。

④の競争促進効果について、OEM契約により委託者は生産コストを削減でき、商品の低価格化が容易になるため競争を促進することに繋がるといえます。

一方、生産コストが共通化することによる当事者間の競争の余地が減少し、競争制限効果が生じ得ます。また、顧客情報や出荷先情報など重要な情報の共通化により協調的な行動がとられやすくなり競争が制限され得ます。

これら競争促進効果と競争制限効果を比較衡量して④を満たすかどうかを判断することができます。

「不当な取引制限」の典型例としては、カルテルや談合が挙げられます。これらはハードコア・カルテルであるのに対し、OEM契約は非ハードコア・カルテルの一種です。

ハードコア・カルテルとは、競争制限以外の効果を持ちそうにない共同行為をいい、これに当たらないものを非ハードコア・カルテルと分類することができます。

カルテルや談合については、こちらの記事を参照してください。

カルテルとはなにか:https://legalsearch.jp/portal/column/cartels-trusts-concerns/

談合とは?:https://legalsearch.jp/portal/column/why-collusion-is-not-good/

OEM契約の適法性が問題となった事例

では、どのような場合にOEM契約の適法性が問題となるのでしょうか。公正取引委員会が公表している「独占禁止法に関する相談事例集」から2つの事例を紹介します。

競争業者へのOEM供給

・事実の概要
化学製品の原料メーカーX社は添加剤Aを製造販売しており、Y社が製造販売する添加剤B1とAを組み合わせた添加剤B3を開発しました。

X社はB3の販売拡大を図るため、競争関係にあるY社に対してB3をOEM供給することを予定しています。

なお、添加剤Bの市場のシェアは、Y社のB1が約60%、Z社のB2が約30%となっています。

・結論
公正取引委員会は、上記X社の行為は不当な取引制限に当たらず、独占禁止法に反しないと示しました。

理由として、X社とY社が販売価格や販売先の情報を共有せずそれぞれ独自にB1やB3を販売すること、またX社はB3を製造原価に近い価格でOEM供給し、B3の原価率が約30%と低いことから競争の余地があり、Z社という競争相手もいることが挙げられています。

建設資材メーカーの相互的OEM供給

・事実の概要
建設資材である甲製品の有力なメーカーであるA社は、製品価格の約1割に当たる運送コストを削減するため、同じく甲製品のメーカーB社との間で相互にOEM供給を行うことを検討しています。

A社は関東地区に、B社は関西地区に工場を有しており、A社の関西以西の顧客への販売相当量をB社へ、B社の関東以北の顧客への販売相当量をA社にそれぞれOEM供給を委託します。

例えば、A社の九州の顧客に納入する場合、従来はA社の関東地区の工場から配送していましたが、B社の関西地区の工場から配送することにより運送コストを削減できます。

甲製品のシェアは、A社が50%弱、B社が40%強となっています。

・結論
公正取引委員会は、上記A社の行為は不当な取引制限に当たり、独占禁止法3条に反すると示しました。

その理由として、販売価格のうち相当の部分を占める製造コストの共通化により競争の余地が少なくなり、またAB2社のシェアの合計が90%を占めることから、競争が減殺されることが挙げられています。

まとめ

・OEM契約とは、他社ブランド製品の製造を受託する契約です。

・ODM契約は、他社ブランドの製品を設計から製造まで受託する契約で、OEM契約より受託する範囲が広いといえます。

・OEM契約は、場合によっては法律に違反するおそれがあるので締結の際は注意が必要です。

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