近年ブラック企業が問題視されていることに伴い、労働組合が注目を集めています。「労働組合がない会社はブラック企業である」と言われることもありますが、本当に労働組合は従業員を守る組織として機能しているのでしょうか?
そこで今回は、労働組合の仕組みやメリット・デメリットをわかりやすくご説明します。
労働組合とは?労働組合の仕組み
厚生労働省によると労働組合とは、労働者が主体となって自主的に労働条件の維持や改善などを目的に組織する団体とのことです。もっと簡潔に言うと、「労働者の権利を守る組織」が労働組合と言えます。
基本的には、会社内にある労働組合に加入すれば労働組合員として活動できます。ただし社内に労働組合がない場合には、地域内の従業員が集まって組織する「ユニオン」に加入し、仲間を集めてご自身で労働組合を作る必要があります。
参考:労働組合 | 厚生労働省
ブラック企業とは?
そもそもブラック企業とは、一体どのような会社を指す言葉なのでしょうか?厚生労働省は、一般的なブラック企業の特徴として下記の3つを挙げています。
- 労働者に対して極端な長時間労働やノルマを課す
- 賃金を払わずに残業させたり、パワハラが横行している(コンプライアンス意識が低い)
- 上記のような状況下で労働者に過度の選別を行う(労働者が使い捨てされている)
上記3つのいずれかに当てはまっていれば、その会社はブラック企業であると言えるでしょう。
労働組合がない = ブラック企業は間違い!
では、労働組合がない会社はブラック企業なのでしょうか?結論から言うと、労働組合がないからといって、ブラック企業であるとは限りません。
あくまで労働組合は、労働者の権利を守るために活動する組織です。労働組合が社内に存在しなくても、長時間労働やパワハラが横行していない企業は少なくありません。
「労働組合がないからブラック企業だろう」と先入観を持ってしまうと、ホワイト企業への就職・転職機会を見逃してしまう可能性もあるので注意しましょう。 ただし、万が一長時間労働やパワハラがあった際に対処しやすいという点で、労働組合がある企業で働いた方が好ましいと考えられます。
労働組合に加入するメリット
労働組合に加入すると、労働者はどのようなメリットを得られるのでしょうか?この章では、労働組合に加入するメリットを3つご説明します。
不当なリストラやハラスメントに対処しやすくなる
労働組合に加入する最大のメリットは、リストラやハラスメントなどの不当な扱いに対処しやすくなる点です。
上司の好き嫌いや同僚との人間関係のこじれなどを理由に、ある日突然解雇されたりハラスメントを受けることは少なくありません。
個人でこうした問題に対処しようとしても、会社側が一個人との交渉に取り合ってくれない可能性があります。一方で労働組合は「労働組合法」という法律によって、団体交渉を会社側とほぼ強制的に行うことができます。つまり労働組合に加入していれば、不当な取り扱いについて会社側に真摯に対応してもらえるのです。
このメリットの重要性については、居酒屋チェーンのワタミの事例を見ると分かります。創業以来ワタミは、「社員は家族」という理由で労働組合の設置に否定的でした。しかし従業員を不当に取り扱うことを阻止する組合がなかったことにより、長時間労働による過労死問題が生じてしまいました。
このことを受けて、ワタミでは2016年に企業別労働組合が結成されました。これ以降同様の問題が生じていないことを考えると、労働組合の重要性が見て取れるでしょう。
経営陣に対して意見を通しやすくなる
経営陣に対して意見を通しやすくなる点も、労働組合に加入するメリットの一つです。
賃金水準や職場環境など、会社内で働いていると不満に感じる部分が多々出てくるものです。しかしこうした労働環境の問題についても、一個人が企業と対等に交渉を進めるのは難しいのが現状です。
しかし労働組合に加入していれば、職場環境などに関する要望を企業と半強制的に交渉することができます。そのため、経営陣に対して意見を通しやすくなるわけです。
会社内での交流を増やせる
労働組合の活動を通じて、会社内での交流を増やせる点も加入するメリットです。
労働組合の多くは、定期的に組合員同士の飲み会やパーティーを開催しています。こうしたイベントに加入すれば、普段の業務では関わらないような人との交流を持つことができます。
労働組合に加入するデメリット
労働組合に加入するとさまざまなメリットが得られる一方で、いくつか注意すべきデメリットもあります。ここでは、労働組合に加入する際に注意すべきデメリットを3点ご説明します。
組合費の出費が生じる
労働組合への加入で無視できないデメリットが組合費の出費です。万が一のトラブルなどに対処できる代わりに、労働組合への加入では毎月組合費を支払わなくてはいけません。
金額はおよそ月額1,000円から5,000円程度と、一般的なサラリーマンにとっては決して少なくない金額です。毎月明確な恩恵を得られるわけでない点を考えると、この出費は手痛いデメリットとなるでしょう。
組合員としての業務が増える
労働組合に加入する二つ目のデメリットは、組合員としての業務が増える点です。前述した通り、多くの労働組合では定期的にイベントを開催しています。あくまで参加は任意ではあるものの、実際には仕事の一部として参加を強制されることが多いです。
また労働組合に加入すると、書類作成やイベント企画など、本業とは無関係の業務を任せられることもあります。
ただでさえ普段の仕事でも精いっぱいにも関わらず、さらに仕事が増える可能性がある点はあらかじめご注意ください。
労働組合の仕組みとメリット・デメリットについて:まとめ
従業員にとって労働組合は、自身の権利を守る上でとてもメリットの多い制度です。仮に労働組合がないと不当な取り扱いを受けても対処できないため、労働組合がない企業はブラック企業の可能性が高いと言えるでしょう。
しかし一方で、労働組合に加入すると、毎月決して安くない組合費を支払ったり、余分な仕事が増えてしまいます。
労働組合にはメリットとデメリットの両面があるため、加入に際しては慎重に検討しましょう。