TVコマーシャルなどで良く聞く「過払い金」とは、カードローンやキャッシングなどで法律の範囲を超えて支払った利息のことですが、この利息を定めているのは「利息制限法」で、2010年6月17日に改正されるまでは「グレーゾーン金利」と呼ばれる高い金利の設定が可能でした。
しかし、利息制限法の改正によってグレーゾーン金利が廃止されたことで、改正前から継続して借入金の返済をし続けている人には「過払い金」が発生している場合があるのです。
金利/利息についての知識があれば違法なヤミ金融にだまされるリスクを回避できる可能性があるので、今回は利息に関する3つの法令を中心に詳しく解説します。
利息の上限を定める3つの法律
お金を借りる際の利息は通称「貸金三法」と呼ばれる3つの法律によって消費者を保護しています。
「利息制限法」・利息の上限(上限金利)を超える部分は無効と定めています
「出資法」・・・出資法で定める上限金利に違反した場合の罰則を定めています
「貸金業法」・・上限金利に違反した貸金業者対する行政処分を定めています
利息制限法
「利息制限法」とは、暴利や搾取を行う貸主から借主である消費者を保護するために「金銭消費貸借契約」における利息や遅延損害金の利率の上限を定める法律です。 利息制限法で定められている上限金利は次のようになります。
元本の額が10万円未満の場合 | 年20% |
元本の額が10万円以上100万円未満の場合 | 年18% |
元本の額が100万円以上の場合 | 年15% |
<ポイント>
- 上限金利を超えた場合、超過部分は無効となり支払いの必要はありません
- 元本以外の金銭は、礼金、割引金、手数料、調査料その他いかなる名義であっても利息とみなされます(※契約締結費用、債務の弁済費用は除く)
出資法
出資法(正式名称「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」)とは、出資の受け入れや金銭の預かり業務、金利を規制する法律で、利息制限法と共に「上限金利」を定めています。
規制の主な対象は貸金業者ですが、条項によっては個人も対象となり、懲役や罰金などの罰則が定められているところが利息制限法と大きく異なる点です。
出資法で定める上限金利は次のようになります。
一般の個人 又は法人 | 年109.5%*を超える利息**の契約をしたとき | 5年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金、又は併科 |
貸金業者 | 年20%を超える利息**の契約をしたとき | 5年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金、又は併科 |
年109.5%*を超える利息**の契約をしたとき | 10年以下の懲役若しくは3000万円以下の罰金、又は併科 |
**債務の不履行について予定される賠償額を含む
<ポイント>
- 出資法における貸金業者の上限金利は金額にかかわらず一律年20%
- 個人でも反復継続する前提で金銭の貸付けを行う場合には「貸金業」に該当するので、貸金業者としての登録が無ければ違法となります
貸金業法
貸金業法は、消費者金融などの貸金業者や、貸金業者からの借入れについて定めている法律で、社会問題となっている多重債務者の増加を解決するため2006年に従来の法律(貸金規制法)を抜本的に改正し作られた法律です。
新しい貸金業法の中で消費者にとって重要なのは次の3点です。
- 総量規制 ⇨ 借入れ可能額を年収の1/3に制限する
- 上限金利 ⇨ 利息制限法の上限利息を超える契約を締結してはならない
- 法律違反 ⇨ 違反者に対しては行政処分を行うことができる
貸金業者が法律違反をしたときの「行政処分」には次の2種類があります。
業務改善命令 | 業務の方法の変更、その他業務の運営の改善に必要な措置を命ずることができる。 |
監督上の処分 | 当該貸金業者に対し登録を取り消し、又は一年以内の期間を定めて業務の全部若しくは一部の停止を命ずることができる |
<ポイント>
- 貸金業者とは、消費者金融やクレジットカード会社(キャッシング)などで、銀行・信用金庫・信用組合・労働金庫などは含まれません
グレーゾーン金利とは
グレーゾーン金利とは、改正前の出資法の上限金利年29.2%と利息制限法の上限金利年15〜20%の間の金利帯のことで「みなし弁済」によって正当化されていました。
みなし弁済
みなし弁済とは、次の5つの要件を満たしていれば利息制限法の上限金利を超える利息の支払を有効とみなす旧貸金業法の規定です。
- 貸主は正規に登録された貸金業者であること
- 貸金業者の名称、契約日、貸付額、利率などを記載した契約書を交付したこと
- 借主が利息制限法の上限金利の超過部分も利息と認識して支払っていること
- 借主が自分の意思で利息を支払っていること
- 貸金業者が弁済を受けたときに受領書を交付していること
このみなし弁済規定は、2006年の最高裁判決で実質上否定され、2010年の法改正で撤廃されました。
借入れの際の注意事項
違法に貸金業務を行なっている業者の中には、銀行や信託会社であるかのように「信託」や「バンク」という文字を商号の中に入れている業者もあります。このような違法な金融業者に騙されないためにはいくつかのチェックポイントがあります。
登録業者かどうか確認する
貸金業を行うには次の登録が必要になりますので必ずチェックしましょう。
- 2以上の都道府県内に営業所や事務所を設置する場合 ⇨ 内閣総理大臣の登録
- 1の都道府県内にのみ営業所や事務所を設置する場合 ⇨ 都道府県知事の登録
登録業者を確認するには2つの方法があります。
- 登録貸金業者情報検索サービスを利用する
- 財務局又は都道府県へ最新情報を確認する
登録は3年ごとの更新が必要ですので登録/更新時期についてもチェックしましょう。
上限金利を超えていないか確認する
貸金業者は利息制限法の上限金利を超える利息の契約を法律で禁止されており、超過する場合は行政処分の対象になるとともに、超過部分は無効となります。
又、前述しましたが、元本以外の金銭は、礼金、割引金、手数料、調査料その他いかなる名義であっても利息とみなされるので、例えば金利が元本の20%のケースで礼金5%を要求された場合には、金利部分は年15%となります。
契約書は納得するまで署名・捺印しない
利息計算、返済条件、返済期間、遅延損害金、手数料、礼金、その他に関して疑問がクリアになるまでは契約を締結せず、おかしいと感じたら専門家に相談するか交渉を一旦中止しすることも必要です。
被害にあった場合には
上限金利を超える違法な金利の請求や、貸金業者による悪質な取り立てなどの被害にあったときは、借入れ条件などが記載されている契約書や業者との交渉を記録した音声データなどを残しておきましょう。犯罪の立証に有効な証拠となります。
お金を借りる時、利息の上限は決まっているの?:まとめ
お金を借りる際の「利息」について、利息制限法、出資法、貸金業法を中心に説明してきましたが改めてポイントを整理します。
- 年20%以上の金利で契約した場合には刑事罰がある(出資法)
- 利息制限法の上限金利を超える部分は無効(利息制限法)
- 法律に違反した貸金業者には行政処分がある(貸金業法)
- 借入れの際は、貸金業者の登録、利息、契約内容などを確認する
- 害にあった場合には契約書や交渉記録などの証拠を残す
以上、お金を借り入れる際には本記事を参考にして、違法な取引には騙されないようにしてください。