LegalSearch (リーガルサーチ)

トラブルなく従業員を解雇する方法!気をつけるべき5つのポイント

トラブルなく従業員を解雇する方法

従業員の成績・素行不良や会社の業績不振などの理由で、やむを得ず従業員の解雇を検討するケースは少なくありません。しかし法律の規定により、一見すると真っ当な理由でも解雇が認められないケースがあります。
法律の規定に反する形で従業員を解雇してしまうと、訴訟などのトラブルに発展するリスクがあります。そこで今回は、トラブルなく従業員を解雇する方法を5つご紹介します。

1.禁止事項に該当する理由で解雇してはいけない

まず大前提として、法律によって従業員を解雇できないケースがあります。禁止事項に該当する理由で従業員を解雇すると、法律違反として懲役刑や罰金刑に課せられるリスクもあるので注意が必要です。

具体的には、下記のケースで行う解雇が法律によって禁止されています。

参考文献
労働基準法第3条、第19条
労働組合法第7条
男女雇用機会均等法第9条

2.解雇予告or解雇予告手当の支払いが必要

禁止事項に該当しないからといって、いつでもすぐに従業員を解雇できるという訳ではありません。労働基準法第20条の規定により、従業員を解雇する際には下記いずれかの手続きを行う必要があります。

ただし数日分の平均賃金を支払った場合は、支払った分の日数だけ解雇予告の日数を短縮できます。たとえば5日分の平均賃金を支払えば、解雇予告を25日前までに短縮することが可能となります。
また、従業員が窃盗や傷害、経歴詐称などの重大な問題行為を起こしたケースや、天災等により事業継続が不可能となったケースでは、解雇予告が不要となります

参考文献:労働基準法 第20条

3.客観的に見て合理的な理由がないと解雇は無効

「禁止事項に該当せず、かつ解雇通知を行えば自由に従業員を解雇できるのか」と思うかもしれませんが、実は従業員を解雇するのはそこまで簡単ではありません。

というのも労働契約法第16条にて、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、解雇は無効であると定められているからです。よって、当然ながら「気に入らないから」とか「従業員を削減して利益を増やしたいから」といった軽い理由では解雇が認められません。

また、「客観的に合理的な理由」自体に明確な決まりがなく、最終的には裁判所が判断するという点も非常に厄介です。たとえ従業員の素行が悪かったり、業績が著しく悪くても、むやみに解雇すると無効とみなされるリスクがあるのです。 「客観的に合理的な理由」に対処する方法については、次の章で解説します。

参考文献:労働契約法 第16条

4.突然解雇するのではなく、できる限り問題解決に努める

前章で説明した通り、能力不足や素行不良など一見すると合理的な要因で解雇しても、裁判所から見て合理的でなければ解雇は無効となってしまいます。

裁判所に「客観的に合理的な理由」と判断してもらうには、解雇に至るまでに最大限問題解決に努めることが必要です。たとえば素行不良であれば、上司による指導を行ったり、賃金カットなどの比較的軽い懲罰を行い、改善に努めることが求められます。
また従業員の素行不良や能力不足などが会社に及ぼした悪影響について、具体的な数字のデータで記録しておくことも大事です。 まずは教育や懲罰などの実施により、最大限問題の解決に努めた上で、それでも解決しそうにないとなって、ようやく解雇という決断を下せるのです。

5.就業規則に記載した「解雇の事由」に該当している必要がある

最後に注意していただきたいのが、解雇の理由が就業規則に記載されていないと、従業員をスムーズに解雇できない可能性がある点です。

会社にとっては大きな損失を従業員から与えられても、就業規則に盛り込んでいなかったが故に解雇が無効となる可能性もあります。 したがって就業規則を作成する際には、可能な限りたくさんの解雇の事由を盛り込んでおくことが大切です。すでに就業規則がある場合は、改訂しておく必要があるでしょう。

トラブルなく従業員を解雇する方法:まとめ

今回見てきたように、よほどの理由がない限り、簡単に従業員を解雇することはできません。従業員をトラブルなく解雇するには、労働基準法や労働契約法などの各法律の決まりに則って、一つ一つ要件をクリアしなくてはいけません。

トラブルなく従業員を解雇したい方は、最低限この記事でお伝えしたち5つの注意ポイントを確認しておきましょう。

ただし、どれほど慎重に従業員を解雇しても、解雇した従業員から不当解雇や残業代の未払いなどに関して訴えられる可能性は十分あります。

そのような時には、従業員が使っていたパソコン等に残っている過去のデータを調べるのがベストです。過去のデータを用いれば、解雇の正当性について証拠を提示し、訴訟で負けるリスクを低減できます。 このような過去の電子データを調査することを「フォレジック調査」と呼びます。フォレジック調査について詳しく知りたい方は、下記の記事を参考にしてみてください。

参考:労務訴訟調査 | フォレジック調査・証拠データ復旧のAOS

モバイルバージョンを終了