代金の未払いや商品の引き渡しが遅れるなど、契約が内容通りに実行されないケースは多々あります。そこで契約の不履行に事前に講じる対策であるのが、今回お伝えする「保証」です。保証という用語を一度は耳にした経験があるように、現代社会では大半の契約で保証が行われています。何気ない買い物からビジネスでの契約に至るまで、ほぼかならず出てくる重要な概念ですので、ぜひ参考にしていただければと思います。
保証とは
民法第446条によると、保証とは「債務者(契約者)が債務を履行しない場合に、保証人がその履行を代わりに行う制度」です。たとえばお金の貸し借りを例にすると、万が一借りた人がお金を返さなかった場合に、代わりに自身が返済する義務を負うケースが保証に該当します。
保証される債務を「保証債務」、保証を行う人と債権者が締結する契約を「保証債務」といいます。保証人には、個人のみならず法人がなることも可能です。企業が融資を受けるさいには、信用保証協会と呼ばれる法人が保証人となるのが最たる例です。
なお一般的な契約とは異なり、すべての保証契約は書面(電子メールなども含む)で行われない限り無効となります。口頭のみで行った保証契約は無効となるため注意が必要です。
保証契約の性質
保証契約は、あくまで債権者と保証人の間で締結する契約であるため、債権者と債務者との法律関係とは無関係の契約です。ですが、債務を担保するという点から、保証契約には下記3つの性質があります。
附従性
附従性(ふじゅうせい)とは、保証契約の成立や変更、消滅が、債務の成立や変更、消滅に従うという性質です。債務が成立しなければ保証債務は成立せず、債務が消滅すれば保証債務も消滅します。
また、保証は債務よりも責任が重いものであってはならないという規定も含まれます。したがって、保証人の負担が債務より重い場合は、保証人の負担を債務の限度まで減縮しなくてはいけません。
随伴性
随伴性(ずいはんせい)とは、債務の移転に伴って移転するという性質です。たとえば債権の譲渡で債務が他の人に移転した場合は、保証も連動して移転します。
補充性
補充性(ほじゅうせい)とは、債務が履行されない場合に、初めて保証人はその債務を履行する責任を負うとする性質であり、民法第446条に規定があります。
たとえば金銭の貸し借りに関する契約の場合、「期限内に債務者がお金を返さない」という事態が生じるまでは、保証人は債務を代わりに履行する責任は負いません。
ただし、突然保証人が債権者から、債務を代わりに履行するように求められる可能性はあります。そのような事態に備え、民法第452条にて保証人の「催告の抗弁権」を規定しています。この規定により保証人は、債権者に対して「まずは債務者に債務履行を請求すべきであること」を主張できます。
また民法第453条では、保証人の「検索の抗弁権」も認めています。検索の抗弁権とは、債権者に弁済する資金力がある旨を証明することで、まずは債務者の財産に強制執行すべき旨を主張できる権利です。
民法では、「債権者は、まず債務者の財産に対して執行をしなければならない。」と規定しています。そのため、検索の抗弁権を行使することで、自身に強制執行が及ぶリスクを抑えることが可能です。
連帯保証とは
今日の取引社会においては、通常の保証契約以上に「連帯保証契約」が重視されています。連帯保証とは、保証人が債務者と「連帯して」保証債務を負担することです。簡単にいうと、債務者とほぼ同等の責任を負うことを約束する保証契約です。
通常の保証契約と比べた場合、下記2つの点から連帯保証人の背負う責任は重いと言えます。
補充性がない
民法第454条の規定により、連帯保証には補充性(催告の抗弁権と検索の抗弁権)がありません。
つまり連帯保証人は、債権者がたとえ債務を弁済できる能力を有していたとしても、突然債務の履行を請求されたり、強制執行の対象となるリスクを背負うのです。
分別の利益がない
通常の保証契約では、複数の保証人がいる場合は「分別の利益(民法第456条)」が適用されます。分別の利益とは、複数の保証人がいる場合に、各保証人は平等の割合で債務を保証すれば良いというものです。たとえば債務が900万円で保証人が3人いる場合、1人の保証人が保証する債務は300万円で済みます。
しかし連帯保証の場合、判例により分別の利益が適用されないとされています。つまり連帯保証人が複数いたとしても、各連帯保証人は債権の全額を弁済する義務を負うわけです。前述の例だと、3人の連帯保証人それぞれが900万円全額を保証する義務が生じます。
保証契約の性質や連帯保証について:まとめ
私たちの生活に欠かせない保証には、実は今回お伝えしたような細かいルールがたくさんあります。特に連帯保証は、通常の保証と比べて背負う責任が重くなります。
保証は、契約で不利益を被らない上で役立つ仕組みです。しかし一方で、保証人となった側は大きなリスクを負う場合もあるため注意しなくてはいけません。
参考:民法 e-Gov