最近、「物言う株主」と呼ばれる、経営者と対立する投資家の存在が、ニュース報道をにぎわせています。一部の企業では、適切な情報開示と透明性の確保などが求められ、無視できない事態も発生しました。こうした対立の舞台となるのが、株主総会です。この記事では、株主総会とは、どのような仕組みで進めて何を決めるのか、さらにどんな役割があるのかについて解説をしていきます。
株主総会とは
株主総会は、株式会社における最高の意思決定機関です。会社の基本的な方針や重要事項について意思決定を行います。
株主総会の役割は、その会社が取締役会を設置している会社(取締役会設置会社)であるか、取締役会を設置していない会社(取締役会非設置会社)であるかによって異なります。
取締役会設置会社の場合
取締役会設置会社の場合、会社の経営に関することは、取締役会で意思決定をします。そのため、株主総会で決議をすることができるのは限定的で、会社法と定款において、「株主総会で定めるべきである」と定められている事項のみとされています。
取締役会非設置会社の場合
取締役会非設置会社の場合には、株主総会の果たす役割への比重が大きくなります。会社法や定款で定められた事項に限らず、会社経営に関する一切の事項について、会社の最高の意思決定機関として決議をすることができるからです。
取締役会非設置会社は、比較的規模の小さい会社が多いため、株主が取締役を兼ねていて、所有と経営が一致していることがあります。このため株主は、所有者として意識から、積極的に経営に参加するスタンスで臨むことが多いのです。
株主総会の種類
株主総会は、1年に一度開催する定時株主総会と、必要な場合に開催する臨時株主総会があります。それぞれの特色について解説していきましょう。
定時株主総会とは
各事業年度の終了後一定の時期に招集される株主総会を定時株主総会といいます。事業年度は、1年を超える期間を設定することができないため、ほとんどの会社は、1年を事業年度としています。そのため、定時株主総会は、1年に一度開催されるのが一般的です。
定時株主総会では、当期事業年度の決算承認、剰余金の配当などが議題となります。
臨時株主総会とは
会社は、いつでも臨時株主総会を開催することができます。
臨時株主総会は、開催すべき日時が定められていません。多くの場合、次の定時株主総会の開催日までに株主総会の決議が必要な場合に、臨時株主総会を開催します。
取締役または取締役会が招集する場合は、日時や場所、議案を決定し、株主に通知します。株主が開催を請求するには、総株主の議決権の3%以上の議決権を有し、かつ6ヵ月以上保有している必要があります。
株主が、取締役または取締役会に対し開催を請求したのにも関わらず、株主総会を招集しない場合は、株主は裁判所の許可を得て、株主総会を自ら招集することができます。
臨時株主総会の議案は広範囲に及びます。たとえば、合併や買収、新株の発行といった重要な意思決定が必要な場合に開催されます。
近年、株主による会社へのモニタリング機能が強化されており、いわゆる「モノ言う株主」の台頭によって、配当の増額請求や取締役の解任決議などが増加しています。
その他にも、辞任などにより欠員が生じて新たに役員を選任する場合などにも開催されます。
株主総会はどのように決議されるのか
株主総会において各株主は、原則として1株につき一つの議決権をもっています。決議には、①普通決議、②特別決議、③特殊決議の3種類があります。多数決の原則で決められますが、それぞれで決議するラインが異なります。
議決権とは
株主総会の決議は、議決権のある株主によってなされます。
株主は、l株につき一つの議決権を有していますが、株式の単位である l単元に満たない株式(単元未満株式)を持つ株主には議決権が与えられません。また、議決権に制限のある株主は、定款で議決権がないとされている事項についての議決権は認められません。
会社は、基準日を定めてその基準日に株式を保有していた者(基準日株主)が議決権を行使することができると定めることができます。また、基準日株主を害さない限り、その基準日後に株式を取得した株主の議決権行使を認めることもできます。
普通決議
普通決議は、議決権を行使できる株式の過半数分を満たす株主が出席した株主総会で、出席した株主がもつ議決権数の過半数の賛成で行う決議のことです。
法律や定款で他の決議方法が定められていない事項について決議する場合には、普通決議によるのが原則です。具体的には、役員の選任決議などがあります。
特別決議
特別決議は、議決権を行使できる株主の議決権の過半数をもつ株主が出席した株主総会で、その議決権の3分の2以上の賛成により決議するものです。株主の重要な利益に関わる事項については、特別決議が必要です。 特別決議が必要となる決議事項としては、資本金の額の減少、定款の変更、現物配当などがあります。
特殊決議
特殊決議は、特別決議よりも決議の要件が重い場合に適用されます。したがって、決議のハードルも高く設定されています。
たとえば、全部の株式の内容について、株式譲渡に会社の承認を要する旨の定款の定めを設ける定款変更をする場合は、その株主総会で議決権を行使できる株主の半数以上で、かつ当該株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です。
また、非公開会社が剰余金配当・残余財産分配・株主総会の議決権につき株主ごとに異なる取扱いをする旨を定款で定める場合には、総株主の半数以上であって、総株主の議決権の4分の3以上の賛成が必要になります。
株主総会では何が決まるのか
株主総会では、会社にとっての重要事項が議題となります。そのため、内容は広範囲に及びますが、議案の内容から、概ね次の3種類に分類することができます。
会社の基本的な方針に関する事項
会社の経営基盤を根底から変更したり、組織を拡大したりする場合は、株主総会での承認が必要になります。たとえば、定款の変更、新株発行、会社の解散、吸収合併契約や株式交換契約の承認などが該当します。
会社の役員に関する事項
取締役や監査役などの選任・解任、役員の責任の一部免除など、会社の役員に関する事項は、株主総会の承認が必要になります。
株主の利害に関わる事項
剰余金の配当や自己株式の取得、役員の報酬額の決定などの株主の利害に大きく関わる事項については、株主総会の承認が必要です。
まとめ
株主総会は、会社の経営基盤を根底から変更したり、組織を拡大したりするといった、会社の根幹にかかわることを決定する、株式会社の最高の意思決定機関です。
かつては、友好関係にある企業同士でお互いの株式を持ち合うことで、株主総会での争議を回避していました。しかし、近年は、規制緩和の流れを受けて、株主総会を構成する株主に、機関投資家、外国人株主、個人株主などが増えたことから、活発な議論が行われるようになりました。
外国に住んでいる個人や法人は外国人株主と呼ばれていますが、彼らはもともと株主としての権利意識が高いため、株主の権利をめぐって定款を変更する場合には高い関心を寄せ、代理人などを通じて総会に積極的に参加してきます。
近年は、日本国内の個人株主も、積極的に株主総会に参加すべきだという考えが広まっており、実際に株主権を有効に行使する株主が増えています。会社側でもリスクに敏感な株主の傾向を踏まえ、自社の情報をオープンにする傾向にあります。
情報のオープン化が避けられない今日の情勢において、企業はむしろ自社のPRとして、株主総会を活用する動きが顕著になっています。