いざ起業するとなった時にはどのような手続きが必要になるのでしょうか。この記事では企業に必要な諸手続きについて簡潔に、かつ分かりやすくまとめています。起業をするのには具体的にどのような手続きをしたらいいのか分からない、そういった方々は是非この記事をお読みいただければと思います。
法人を起業する場合、大きく分けて『1.自ら準備を行うステップ』と、『2.第三者からの承認を得るステップ』の二つが存在します。この記事では、二つのステップを以下のように細分化し、法人設立に際する諸手続きに関する説明をします。
目次
- 1.自ら準備を行うステップ
- 1-1 定款の作成
- 1-2 定款とその他書類等の準備
- 1-3 資本金の準備
- 1-4 資本金の払い込み
- 2.第三者から承認を得るステップ
- 2-1 公証役場で定款の認証
- 2-2 法務局で登記申請
- 2-3 その他各種手続き
【1.自ら準備を行うステップ】
1-1 定款の作成
定款は『会社の憲法』と呼ばれており、いわば会社のルールブックのようなものです。定款に記載しなければならない要綱は①絶対的記載事項と②相対的記載事項という大きく分けて2つ存在します。絶対的記載事項については、過不足なく記載されていなければ定款自体が成立しない必須要綱で、相対的記載事項については、定款に記載することによって法的な効力を持つ要綱になります。
《絶対的記載事項》
絶対的記載事項は以下の6点で、これらが過不足なく記載されていることが必須条件となっています。
《相対的記載事項》
一方で相対的記載事項は絶対的記載事項のように決まっておらず様々なものが存在します。具体的にどのような事項があるかというと、『株式の譲渡制限』、『変態設立事項』、『株券発行』、『監査役の任期伸長』などが挙げられます。先述したように、相対的記載事項は定款に必ずしも記載する必要はありませんが、記載することで強い法的拘束力を持ちます。
尚、以上説明したものは”紙媒体”で定款を作成する場合を想定したもので、”電子定款”を作成する場合には他に必要なものとして、以下の3点が挙げられます。
- 電子署名ソフト…定款をPDF化し電子署名を加えるためのソフト
- ICマイナンバーカード
- ICカードリーダライタ…マイナンバーカードを読み込むためのソフト
電子定款にするメリットは後述する収入印紙40,000円を節約できるということが挙げられますが、一方で以下記載のソフトを用意するとなると同程度、もしくはそれ以上の費用がかかってしまいます。そこで、電子定款の作成を補助してくれるサービス等も現在は多く存在していますので、自ら用意するのではなくそういったサービスを有効活用すると良いかと思います。
1-2 定款とその他書類等の準備
定款を作成した後、本社所在地がある都道府県内の公証役場に認証してもらう必要があり、それにあたって提出が必要な書類がいくつか存在します。紙媒体の定款を提出する場合と、電子定款を提出する場合とで手続きに必要な書類等が異なるため分けて説明します。
〈紙媒体の定款〉
- 定款 3部
- 発起人全員の3か月以内に発行された印鑑証明書
- 発起人全員の実印
- 認証手数料 50,000円 (現金のみ)
- 謄本代 250円×定款のページ数 (現金のみ)
- 収入印紙40,000円
- 委任状 (代理人が申請する場合のみ)
〈電子定款〉
電子定款の場合でも以下の書類等を用意し公証役場に行く必要があります。
- USBメモリ等の記録媒体
- 電子定款をプリントアウトしたもの 2通
- 発起人全員の3か月以内に発行された印鑑証明書
- 認証手数料 50,000円
- 電磁記録の保存手数料 300円
- 同一情報の提供手数料 一通につき700円+(20円×(枚数+1))
- 身分証明書
- 印鑑
- 電子署名をした発起人以外の委任状(発起人が複数いる場合のみ)
1-3 資本金の準備
資本金とは、基本的には会社設立に際して必要とする資金のことを指します。場合によっては途中で資本金が増額されるケースも存在します。そして設立当初の資本金が運転資金の基となり、出資や融資を受ける際の評価観点でもあります。というのも、2006年に施行された会社法によって1円から法人を設立することが可能となりましたが、資本金の大小はその会社の資金力の強さ、即ち社会的信用を表す指標であるため資本金が1円の会社は投資家からの出資や金融機関からの融資を受けづらくなってしまいます。具体的に株式会社を設立する場合を想定した時に、資本金を準備する方法としては株式を発行することで出資者から資本金を募る方法が挙げられます。ただ、基本的には発行した株式を自己資金で払い込みをすることが多く、中には設立時から第三者からの出資を受けることもあります。
1-4 資本金の払い込み
後述する公証役場における定款の認証が成された翌日以降に、発起人の個人名義の口座に資本金の払い込みを行う必要があります。尚、法務局で登記申請をする際に必要な証拠書類として、通帳のコピー以下3点が必要となります。
- 表紙
- 1ページ目の見開き
- 資本金の振り込みが記載されたページ
【2.第三者から承認を得るステップ】
2-1 公証役場で定款の認証
紙媒体の定款または電子定款を認証してもらうために、本社所在地がある都道府県内の公証役場に行く必要があります。尚、当日アポイントメント無しで行くのではなく、事前に連絡をして公証人と訪問の日時を決める必要があるためご注意ください。
2-2 法務局で登記申請
公証役場で定款の認証を終え、資本金の払い込みまで終えた後、法務局で登記申請を行います。法人を設立する際に必要な書類として、『①必ず必要となる書類7点』と、『②場合によっては必要となる書類3点』があります。(以下記載)これらの書類10点を準備して法務局で登記申請を完了すると、10日程度で登記が認証されます。登記が認証されたことを証明する『登記事項証明書』の交付申請を発行した後、国に届け出た会社の実印を証明する『印鑑カード』を交付してもらって手続きは終了になります。
《必ず必要となる書類7点》
- 登記申請書
- 登録免許税納付用台紙
- 定款
- 取締役の就任承諾書
- 資本金の払い込みを証明する書類
- 印鑑届書
- 登記すべきことを保存したCD-R
《場合によっては必要となる書類3点》
- 代表取締役の就任承諾書
- 取締役全員の印鑑証明書
- 発起人決議書
2-3 その他各種手続き
法務局で登記申請を完了し、無事法人設立が承認された後でも事業を実際に開始する前に必要な各種手続きが存在します。以下従業員の有無によって必要となる手続きの数が異なるので従業員の有無で分けて説明します。
《設立時従業員無し》
各種手続き内容 | 手続き先 |
国税届け出 | 税務署 |
地方税届け出 | 地方自治体 |
雇用保険届け出 | ハローワーク |
法人口座開設 | 銀行 |
《設立時従業員有り》
各種手続き内容 | 手続き先 |
国税届け出 | 税務署 |
地方税届け出 | 地方自治体 |
雇用保険届け出 | ハローワーク |
法人口座開設 | 銀行 |
社会保険加入 | 年金事務所 |
労働法に関する届け出 | 労働基準監督署 |
まとめ
起業して会社を設立する場合の手続きに抜けがあると、設立後においても法的な問題を抱えたまま会社の経営を続けることになってしまいます。
法的な問題があると、他者との取引ができない、必要な認証や認可を受けられない、投資を受けられないなど、事業活動に大きな支障をきたす可能性もあります。
しかし、こういった手続き事に手が回らないという方もいるかもしれません。
そういった方は、会社の設立を専門にしている司法書士などの専門家に相談をしてください。