従業員が発達障害である場合、その程度によって業務に支障をきたすことがあります。では、発達障害と診断された場合には解雇することができるのでしょうか?この記事では、発達障害と雇用について関連法律も合わせて解説します。
発達障害とは
発達障害は、幼い頃から症状が現れて、成長していくにつれて苦手な所が浮き彫りとなっていき、だんだん生きづらさを感じるケースがある障害です。
ルーティーンが苦手で仕事を完遂できなかったり、衝動性や不注意で対人関係を悪くしたり、読み書き計算が不得意で業務に支障をきたすことなどが考えられます。発達障害は家族や周りの人の理解が必要で、本人が実力を出せるよう工夫しなければなりません。
発達障害には種類がある
発達障害には種類があり、それぞれ症状が異なります。たとえば、「自閉症スペクトラム障害」は、対人関係やコミュニケーションの障害、偏ったこだわりを見せる発達障害です。
また、「注意欠如・多動性障害(ADHD)」は、多動・衝動性、不注意が見られる発達障害です。さらに、「学習障害(LD)」は、特定の事柄のみ極端に苦手という障害が見られます。
ほかにもアスペルガー症候群、チック障害、吃音など、ひと口に発達障害といっても多種多様なのです。
先天的な脳機能の疾患
発達障害は、先天的な障害であり、病気ではありません。脳の発達がほかの人に比べて異なり、同じ発達障害であっても個人差があるのです。同一人物に複数の発達障害があるケースも珍しくないため、発達障害の人同士でも似ていないことも多いのです。
会社はどう対応すべきか
従業員が発達障害と診断された場合、会社側の対応はどのようにあるべきなのでしょうか?ここではその対応について「解雇することができるのか?」も踏まえて解説します。
解雇はNG
発達障害と診断されただけでは、解雇はNGです。発達障害によって業務遂行能力が低い場合には、解雇してしまいたくなるかも知れませんが、不当解雇として訴えられる可能性があります。しかし、解雇が認められる判例もあります。
業務怠慢が続いたことで、懲戒処分による反省を促しても改善の見込みがない場合には、懲戒解雇が妥当とされることもあります。本当に改善の余地がないのか、きっちりと確認が必要となります。
評価基準を一定にする必要がある
発達障害と診断された従業員は解雇したにも関わらず、ほかの従業員が同じことをして解雇されなければ、基準が不公平となります。そのため、同等に扱わら蹴ればなりません。
就業規則に盛り込んだ方が良い
その時々の対応をすると、基準や一貫性が疑われる可能性もあります。そのため、就業規則に盛り込んでおく必要があります。たとえば、うつ病を併発した場合、休職をすすめるケースがあります。しかし、休職制度は労働基準法に定めがないため、就業規則に定めておかないともめる原因となります。
向いている仕事を任せる
解雇は最終手段とし、可能な限りの人材活用を念頭におきましょう。先述のとおり発達障害は個人差があるため、適材適所の考え方で解決する場合もあります。発達障害に関する理解を深めた上で、本人の能力に合った職務に就かせましょう。
関連法律を要チェック
発達障害と雇用における関連法律を紹介します。法律条文の趣旨だけコンパクトにして、以下の表にまとめます。ぜひ参考にしてください。
発達障害者支援法
第1条 学校教育での支援、就労支援、発達障害者支援センターの指定など
第2条 発達障害が脳機能の障害で、低年齢において現れると政令で定めるもの
労働契約法
第3条 労働契約は、労使が対等の立場で締結や変更すべきものとする
第3条2 労働契約は、労使が就業の実態に応じて、均衡を考慮して締結や変更すべきものとする
第3条3 労働契約は、労使が仕事と生活の調和にも配慮して締結や変更すべきものとする
第3条4 労働者や使用者は、労働契約を遵守して誠実に権利・義務を行わなければならない
第3条5 労働者や使用者は、権利を濫用してはならない
第5条 使用者は、労働者の安全を確保するよう配慮しなければならない
第16条 解雇に関して、客観性や合理的理由がない場合は無効となる
第17条 使用者は、やむを得ない事由がない限り、契約期間が満了まで労働者を解雇できない
これらの内容を踏まえて適切に対応する必要があります。
従業員が発達障害と診断された場合、解雇することができるのか?:まとめ
発達障害は先天的な特性であり、病気に分類されるものではありません。いくつかの種類があったり、複数の障害があらわれることもあるため、個別の対応が必要となります。解雇は最終手段として、適材適所など、できる対応が肝要です。万一何らかの処分を課す場合は、ほかの従業員と公平に行いましょう。