今回の記事ではカップヌードルが持つ特許について、従来の即席麺が抱えていた課題を踏まえつつ、技術的な概要や即席麺にもたらしたメリットをご紹介します。
カップヌードルが持つ特許は「容器付きスナック麺の製造法」
カップヌードルが持つ特許は、「容器付きスナック麺の製造法」と呼ばれるものです。1971年3月23日に日清食品株式会社が出願し、1973年2月3日に公開されました。発明者はNHKの朝ドラ「まんぷく」で有名となった安藤百福氏です。
従来の即席麺が抱えていた課題を解決する画期的な技術であったこと、また当技術を基に作られたカップヌードルが大ヒットしたことが相まって、この技術を用いてカップ麺を製造した会社は27社に及びました。
参考:日清食品グループ
従来の即席麺が抱えていた課題
はじめに、カップヌードルが発売される以前において、即席麺が抱えていた課題を確認しておきましょう。
即席麺にはどのような課題があったのか
カップヌードルが発売される以前、即席麺には厚さ約2cmにプレス成形した麺塊が用いられていました。この麺塊を容器に入れるとなると、6cmという分厚い麺塊が必要となります。
ところが、分厚い麺塊を用いる関係から、油熱処理の際に熱が内部に浸透しにくく、中央部を完全に揚げようとすると外面が焦げてしまう問題を抱えていました。また、熱湯を注いだ際に麺塊の分厚さから、熱湯の浸透が悪く麺が復元しにくいという課題もありました。
断熱性の容器に即席麺を入れるアイデアはすでに存在したものの・・・
カップヌードルの特許技術が発明される以前から、断熱性の容器に即席麺を入れるアイデアは存在していました。しかし、従来の「どんぶり型の発泡スチロールに従来の即席麺を入れる」というアイデアには、下記のような欠点がありました。
- 輸送や運搬の過程で、容器内で麺塊が移動するため、麺の折れや崩れが生じる
- 麺塊と容器の隙間から乾燥させた具材が下方に移動し、熱湯で麺を復元した際の見栄えが悪くなる
- 激しい揺れなどにより麺塊が移動し、容器が破損する
- 片手で持つことが難しく、戸外や食卓のない場所での食事が困難
上記のような課題があったため、容器付きの即席麺は発売に至っていませんでした。
「容器付きスナック麺の製造法」の技術的な概要
上記のような課題を踏まえ、日清食品の創業者である安藤百福氏が開発したのが「容器付きスナック麺の製造法」です。この特許技術には、大きく2つの特徴があります。
1つ目の特徴は、麺をカップ状の型に入れて、その型ごと油に入れて揚げる点です。この特殊な処理を行うことで、カップ内にて麺が浮き上がり、上部が平坦かつ密で下部に空間がある麺塊が出来上がります。
2つ目の特徴は、上記の処理により出来上がった麺塊を、カップ状の型と同じ形で、それよりもわずかに内径が大きなカップ容器に麺塊を詰める点です。その麺塊の上に具材や調味料を乗せて密封することで、容器付きスナック麺の完成となります。
カップヌードルの特許技術がもたらしたメリット
では一体、上記の特許技術は即席麺にどのようなメリットをもたらしたのでしょうか?カップヌードルの持つ特許技術は、即席麺の利用者に対して下記4つのメリットをもたらしました。
麺塊が崩れたり容器が破損する心配がない
麺体の側面がカップ容器の内側と密接するため、輸送中などにカップ内にて麺塊が動くことがありません。麺塊が固定されるため、崩れたり麺塊がぶつかることで容器が破損する心配がなくなりました。
食欲増進の効果
上記の技術で作られたカップ麺は、麺塊の上面が平坦かつ密となります。そのため、乾燥させた具材や調味料を上に乗せても、乗せたものが麺塊の中に入り込む心配がありません。
お湯を入れて食べるタイミングでも、具材や調味料が上部で復元するため、見栄えがよく食欲を増進させる効果をもたらします。
戸外でも幅広く食べられる
収納容器の形状をカップにしたことで、片手で持ちながら食べられる商品へと生まれ変わりました。これによりカップヌードルは、駅や公園、ハイキングなど、戸外でも幅広く食べられる即席麺として親しまれるようになったのです。
麺線の復元が早い
当技術によって作られた即席麺は、油熱処理により上方のみ密で、下部は密度の低い状態となります。そのため、熱湯を追加するとお湯が麺の内部まで十分かつ均等に行き渡りやすく、従来の即席麺と比べて麺塊の復元が圧倒的に早くなりました。
カップヌードルが持つ特許とは:まとめ
カップヌードルの持つ特許技術は、従来の即席麺の課題を解決し、利用者に対して多大なメリットをもたらしました。革新的な技術がふんだんに盛り込まれたからこそ、カップヌードルは現在でも愛される食品となっているのです。
今回の事例のみならず、普段私たちが身近に使用している商品を詳しく調べると、実は革新的な特許技術が隠されているかもしれません。