世の中にはさまざまな法律がありますが、その中でも特に日々の生活と密接しているのが「民法」です。今回の記事では、民法の概要や原則、構成、重要な論点をわかりやすく解説します。
民法とは
民法とは、私人間の権利や義務の関係性をまとめた基本的な法律です。「民のための法律」の略称から分かる通り、公的機関と市民の間ではなく、市民と市民の間における関係性をまとめているのが特徴です。
私人間の権利義務と言っても、民法の対象となる内容はさまざまです。具体的には、家族や相続などに関する規定から、企業対個人、企業同士における財産権の取り扱いに関する規定など、その範囲は多岐にわたります。
基本的な法律と前述したとおり、民法は会社法をはじめとした様々な法律の考え方における基本ともなっています。日々の生活やあらゆる法律と密接に関わっているため、司法試験などの国家試験においては、ほぼかならず受験科目となっています。
民法の原則(基本的な考え方)
民法の条項は非常にたくさん存在しますが、各条項に共通した考え方(原則)があります。この章では、民法において特に重要と言われている3原則を解説します。
権利能力平等の原則
権利能力平等の原則とは、誰でも平等に権利義務の主体となれるという原則です。民法では、職業や性別などに関係なく、所有権の主体となることが認められています。
私的自治の原則
私的自治の原則とは、私人間の権利義務関係について、各個人が自由な意思に基づいて決定することができるという原則です。民法では、他の会社や国家などから干渉を受けずに、自分の意思で契約などを締結することが認められています。
所有権絶対の原則
所有権絶対の原則とは、個人が持っている所有権が、国家権力や他人・他社によって侵害できない権利であるとする原則です。たとえば民法では、国や第三者が許可なく個人の財産を持っていくことを認めないという考え方に立っています。
民法の構成
民法は、大きく「財産法」と「家族法」の2種類に大別されます。財産法とは、民法のうち財産(土地など)に関する規定が定められた法律の総称であり、「総則」、「物権」、「債権」の3分野が当てはまります。一方で家族法とは、家族関係に関する規定が定められた法律の総称であり、「親族」と「相続」の2分野が含まれます。
この章では、「総則」、「物権」、「債権」、「親族」、「相続」の概要を簡単にご説明します。
総則
総則とは、民法全体(主に財産法)に共通する規定を定めた部分です。具体的には、時効や権利義務の主体、意思表示・代理などの法律行為に関する規定が記載されています。また、通則の部分位は、権利濫用の禁止をはじめとした私法の基本的な原則が定められています。
物権
物権とは、「物」に対する権利、またはそれを定めた民法の部分を意味します。民法の物権では、所有権や抵当権、質権、先取特権などの権利が定められています。
債権
債権とは、特定の人に対して、行為の実行を要求する権利、またはそれを定めた民法の部分を指します。民法の債権部分は、債権全般に共通しているルールを定めている「債権総論」と、発生原因に応じて個別のルールを定めた「債権各論」に分けることができます。
なお債権総論では、債権の種類や弁済、相殺などに関する事項、債権各論では贈与や売買、請負などの契約に関する事項などが定められています。
親族
民法において、親族に関係するルールを定めた部分は「親族法」と呼ばれます。親族法の部分では、親族関係の基本や親子関係、婚姻、親権、扶養などに関するルールが定められています。
相続
民法において、相続に関係するルールを定めた部分は「相続法」と呼ばれます。相続法の部分では、遺産分割や相続放棄、遺言などに関するルールが定められています。
民法に関するその他重要な論点
ここまでご説明した以外にも、民法には2つの重要な論点があります。この章では、2つの論点をくわしく解説します。
「一般法」である
まず1つ目は、民法が一般法であるという点です。
法律は、幅広く一般的に適用されるもの(一般法)と、特定の条件を満たしている場合にのみ適用されるもの(特別法)に大別されます。そして、一般的に法学の実務では、「特別法は一般法に優先する」という原則が適用されます。
つまり、ある状況下において民法と特別法の両方が適用できる場合には、民法ではなく特別法の定めを優先的に適用するということです。たとえばビジネスにおける売買取引では、民法ではなく商法の考え方を優先すべきケースが多いでしょう。 法律上の問題を考える際は、まず特別法が適用できる状況かどうかを確認し、適用できない場合に民法を適用しましょう。
「任意法規と」「強行法規」
前述した分類とは別に、法律は「任意法規」と「強行法規」に分けることができます。任意法規とは、その法律に従うことが絶対ではなく、私人間の約束事が優先される法律です、一方で強行法規とは、個人間の取引などに関係なく、そのルールが強制的に適用される法律です。
民法においては、条項によって「任意法規」と「強行法規」のどちらに該当するかが異なる点に注意が必要です。また、人によって「任意法規(強行法規)」に該当するかどうか見解が分かれる条項もあります。 難しい部分ですので、どちらに該当するか迷った場合には、弁護士などの専門家に相談するのがおすすめです。
民法とはなにか?:まとめ
民法は、日々の生活やビジネスなどに密接しています。そのため、民法を理解することで、他人との人間関係や事業の戦略を円滑に進めやすくなります。今回お伝えした内容を参考に、民法に対する理解を深めてみてはいかがでしょうか?