今回の記事では、民事訴訟の意味や刑事訴訟との違い、種類、手続きの流れなどを解説します。
民事訴訟とは
はじめに、民事訴訟について最低限知っておくべき事項をご説明します。
民事訴訟の定義
民事訴訟とは、個人間の法的な紛争について、裁判官が当事者双方の言い分を聞き、証拠の調査を行った上で、紛争の解決を図る手続きです。
民事訴訟と刑事訴訟の違い
民事訴訟と刑事訴訟には、主に以下の違いがあります。
民事訴訟 | 刑事訴訟 | |
目的 | 個人間の紛争を解決すること | 犯罪者の罪の有無や量刑を決定すること |
和解の有無 | 和解による解決手段が用意されている | なし |
捜査の強制力 | 証拠確保の強制力は低い | 強力な権限が与えられる |
民事訴訟の対象となる具体的な案件
民事訴訟では、主に下記の紛争を取り扱います。
- 貸金の返還
- 交通事故の賠償請求
- 不動産の明渡し
- 相続
- 自己破産
- 名誉毀損の賠償請求
- 離婚にともなう慰謝料請求
民事訴訟の種類
民事訴訟は、大きく下記の4種類に大別されます。
通常訴訟
通常訴訟は、主に財産権に関係する紛争を解決する目的で行う訴訟です。資金の返還や人身損害に対する損害賠償を求める場合などは、通常訴訟に該当します。
少額訴訟
少額訴訟は、60万円以下の金銭の支払いを求める訴訟です。通常訴訟と比較して、簡易な手続きで行える上に、申し立て費用も安いです。
手形小切手訴訟
手形小切手訴訟とは、手形や小切手金の支払いを求める訴訟です。判決がスピーディーに言い渡される点や、書証と当事者尋問に証拠が限定されている点が特徴です。
その他の訴訟
上記以外には、家族に関する訴訟(人事訴訟)や、行政庁の行為を取り消してもらう訴訟(行政訴訟)などがあります。
民事訴訟の手続き・流れ
一般的に、以下の流れで民事訴訟の手続きが進められます。
原告による裁判所への訴状の提出
紛争が発生した後、当事者のいずれか一方が裁判所に訴状を提出し、この訴状が受理された時点で民事訴訟が開始されます。なお訴状を提出した側は「原告」、相手方は「被告」と呼ばれます。
裁判所による訴状の受付、被告に対する訴状の送付
訴状を受け付けた裁判所は、被告に対して訴状を送付します。
裁判所による口頭弁論期日の指定・呼び出し
訴状を被告に送付した後、裁判所は原告・被告双方に対して口頭弁論期日を通知し、弁論に参加するように呼び出しを行います。
被告による答弁書の提出
口頭弁論の期日を通知された被告側は、答弁書を裁判所に提出します。答弁書には、訴状に対する反論の内容を記載します。なお原告と被告は、訴状や答弁書を提出するときに、自身の主張を客観的に裏付ける証拠を提出できます。
審理の実施
裁判所が定めた期日に、原告と被告、その代理人となる弁護士が出廷し、審理(口頭弁論)が実施されます。審理では、具体的に下記の手続きが実施されます。
- 原告側:訴状に基づいて主張を述べたり、証拠を提出したりする
- 被告側:答弁書に基づいて訴状に対する反論を行ったり、証拠を提出したりする
- 裁判所:原告と被告双方の主張を聞き、証拠書類の確認、証人の取調べなどを行った上で、争点を整理する
なお、当事者双方の言い分が食い違うなどした場合には、改めて別日に口頭弁論が行われるケースもあります。真理には、平均で半年〜1年間ほどかかると言われています。
和解または判決
話し合いを経て、原告と被告が紛争を解決できれば和解となります。和解に至らない場合には、裁判所が原告・被告の双方に向けて判決を下します。
なお判決内容に納得できない場合には、裁判結果の変更や取り消しを求めて「上訴」することが可能です。
民事訴訟に関する重要ポイント
最後に、民事訴訟に関する重要なポイントを3点解説します。
訴状を無視するとどうなる?
訴状の内容に身に覚えがない場合には、無視するという選択肢を選ぶ方も少なくありません。しかし、届いた訴状を無視して口頭弁論に出廷しないと、原告側の主張が完全に認められてしまう可能性が高いです。 デタラメな主張であっても通ってしまう可能性があるため、訴状が届いたらしっかりと対応することが重要です。
口頭弁論の指定期日に参加できない場合はどうすべき?
仕事の都合などで指定された口頭弁論の期日に参加できない場合、担当者(裁判所書記官)に連絡を行い、期日の変更を願い出ることができます。仮に、何も対応せずに欠席すると、自らにとって不利な判決が下される可能性があるため注意しましょう。
刑事訴訟とは別に民事訴訟を提起されるのはなぜ?
あくまで刑事訴訟は被告人の処罰を決めるものであり、被害者に対する損害賠償などは決定されません。そのため、損害賠償などを求めて民事訴訟を提起される可能性は十分考えられます。
民事訴訟とは?/まとめ
民事訴訟と刑事訴訟は、目的などに大きな違いがあります。民事訴訟の当事者となる場合は、あらかじめ訴訟の手続きを入念に確認しておき、スムーズに対応できるようにしておきましょう。
参考:民事訴訟 裁判所