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テレワーク導入前の3つのステージと課題

テレワーク導入前の課題

総務省の平成29年通信利用動向調査によると、民間企業におけるテレワークの導入率は13.9%とまだまだ高いとは言えません。平成24年のテレワーク導入率が11.5%でしたので、テレワーク導入企業はゆるやかに増加しています。政府は2020年のテレワーク導入率34.5%を目標にしています。まだまだ目標遠く及ばない状況にあるのではないでしょうか。

しかし、総務省によるテレワークの利用動向調査(「ICTによるインクルージョンの実現に関する調査研究(2018年)」によると、「現在利用していないが、積極的に利用したい」と「現在利用していないが利用してみたい」を合わせた利用に前向きな回答は全体では34.5%と報告されています。年齢別にみると、20代の51.8%が最も高く、年齢が若くなるほど高くなることが明らかになりました。

若い世代を中心として、少しずつテレワーク導入への意欲が高まってきているようです。総務省作成「働き方改革のためのテレワーク導入モデル(平成30年6月)」によると、テレワーク導入ステージには3つのステージがあり、それぞれのステージにおいての課題が報告されています。

テレワーク導入の3つのステージと課題

テレワーク導入のステージには、「試行導入期」「正式導入期(一部)」「正式導入期(普及拡大)」の3つステージがあります。テレワーク導入前の「試行導入期」とテレワーク導入後の「正式導入期(一部)」「正式導入期(普及拡大)」に分けて課題をご紹介したいと思います。

テレワーク「試行導入期」と課題

「試行導入期」は企業や団体がテレワークを正式に導入できるかどうか検討し、トライアルを行うための期間です。「試行導入期」には以下の3つの課題があります。

経営層に対するテレワークのメリットの訴求

テレワーク推進担当者は、経営層に対してテレワークの定性的なメリットだけではなく、経営指標を交えて定量的に説明する必要があります。テレワークの効果を定量的に説明するための指標としては、事例として以下のような項目が紹介されています。

テレワークに批判的な層への対応

業界や企業の風土から、「自分の業務や業種にはテレワークは向かないだろう」とテレワークを実施してみることに批判的な層がいる場合があります。役員や部長などでテレワークに批判的な人がいると、特定の部署においてテレワークが推進されないという状況になる可能性があります。

しかし、試行段階から管理職を巻き込んでおくことによって、管理職のテレワークに対しての理解が深まり、前向きな評価をもらえることが多いようです。例えば、株式会社日本取引所グループでは、2016年度に120名が在宅勤務のトライアルを実施。部長クラスは全員実施を必須とし、各部で管理職と非管理職を数名ずつ選定。効果を認める声が大半を占めたため、2017年度からテレワークを本格導入したそうです。(総務省作成「働き方改革のためのテレワーク導入モデル」P.11より)

テレワーク環境整備のためのツール導入費用捻出

テレワークを導入するには、ノートパソコン、タブレット端末、携帯電話などのモバイルデバイスのほか、労務管理ツール・Web会議ツール・ファイル共有ツールなどのITツールやソフトウェアが必要になります。これらのデバイスやITツール・ソフトウェアの購入やリース費用が高額になれば費用の捻出方法が課題となります。

無料ツールや定額制のクラウドサービスを利用することにより費用を抑えることも可能です。また、テレワークを導入して削減される費用の一部を原資とするよう、経営層を説得することも一つの考え方です。

テレワーク「一部導入期」から「普及拡大期」の課題

テレワーク推進関係者でのトライアルが終わり、会社としてテレワークの導入が決定しても利用者が増えなければ意味がありません。また、テレワークを導入した企業が直面する課題もいくつか報告されています。

時間制約がない従業員に対するテレワークの普及啓発

育児や介護などによる時間制約がない従業員は、テレワークの必要性を感じない可能性があります。また、テレワークは普通に出勤できない社員のための特別措置という誤った認識がされている可能性もあります。

「テレワーク推進委員会」というようなテレワークの推進組織を準備して、テレワークを行う場合の業務の効率化・生産性の向上、通勤ラッシュの回避といったメリットを伝えてテレワークの利用促進を図る必要があります。

テレワークに不向きな部署での不公平感の払拭

現場・接客部門などの職種は在宅勤務やサテライトオフィス勤務など職場を離れて業務を行うことができず「不公平感」をいただきがちと言われています。不公平感を払拭するためには、「テレワーク利用の回数や時間の制限といったルールを決める」「在宅勤務やサテライト勤務以外の部分でメリットを実感できる勤務環境を整備する」「現場・接客部門のテレワークを変革する可能性があるVR・遠隔操作ロボットといった先端技術を検証する」といった方法が提案されています。

テレワーク社員のマネジメント方法を確立する

管理職はテレワークをする従業員が「サボるのではないか」「隠れ残業をするのではないか」といった懸念を抱き、従業員側には「自分の状況を上司は理解してくれていないのでは」「上司に相談できないと業務ができない」という不信感、スキル不足の懸念があるようです。

チャットツール活用や定期的な面談などでコミュニケーションを維持し、各従業員の業務進捗状況、力量を把握した上で業務にアサインすることが推奨されています。

人工(ニンク)ビジネスにおける「クライアントの壁」を打破する

クライアント先に常駐し、1人月〇〇円といった形で人工に対価を請求するような形態の業界においては、クライアントに在宅勤務について相談すると、「実施者の自宅に監視カメラをつけることが条件」とされることが多いようです。

また、委託元の社員も協力会社のスタッフだけを現場に残すことはできないことを理由に、テレワークを行うことを断念するケースもあるようです。この場合には、可能な範囲でテレワークの利用が可能な業務を広げるとともに、顧客との交渉を粘り強く行う必要があります。さらに、業界全体としての慣習の見直しも求められています。

参考:総務省作成「働き方改革のためのテレワーク導入モデル(平成30年6月)」

テレワーク導入前の3つのステージと課題:まとめ

民間企業におけるテレワークの導入率は13.9%とまだまだ高いとは言えません。しかし、テレワークの利用動向調査によると、若い世代を中心として、少しずつテレワーク導入への意欲が高まってきているようです。

テレワーク導入の3つのステージ「試行導入期」「正式導入期(一部)」「正式導入期(普及拡大)」には、それぞれで異なった課題があります。テレワークを先進的に導入している企業の事例やベスト・プラクティスも総務省のテレワーク推進サイトでも報告されています。ぜひ参考にしてみてください。

参考資料

総務省「ICTによるインクルージョンの実現に関する調査研究(2018年)」
総務省作成「働き方改革のためのテレワーク導入モデル(平成30年6月)」
総務省のテレワーク推進サイト

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