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国勢調査ってなぜ必要?

国勢調査

国勢調査は、我が国の人口などを明らかにするために、5年ごとに実施される全国規模の調査です。直近では、2020年に実施されました。特徴的なのは、調査方法が人海戦術だという点です。

インターネットでの回答が可能になった今日においても、調査票の配布や回収は、その多くが調査員の人力に頼っているのです。言い換えれば、それだけの手間やコストをかけてでも実施する意義がある調査だということになります。この記事では、国勢調査の役割について解説するとともに、ビジネスに生かすヒントを案内していきます。

国勢調査って何?

国勢調査とは、我が国の人口や世帯の状況を明らかにするために、日本国内に居住するすべての人を対象にした調査のことです。第1回の国勢調査は、大正9年に実施され、それ以来ほぼ5年ごとに行っています。直近の2020年の調査を含めて過去21回実施されました。

国勢調査を通じて得られる多様な統計情報は、国や地方公共団体が推し進める行政の基礎データとして広く活用されることを始め、民間企業や研究機関などでも幅広く活用されています。

調査は、住民の中から特別に任命された国勢調査員が各世帯に直接調査書類を届け、回答を依頼します。調査票は、オンライン上での回答、郵送、調査員への提出の3種類の方法が選択できます。

調査対象は、住民票の有無とは関係なく、実際に3カ月以上居住している住民です。このため日本人だけでなく、日本で暮らす外国人も国勢調査の対象になります。

期日までにオンラインや郵送による回答がない場合は、国勢調査員が居住先を訪ねて回答を促すことになりますが、多様な生活習慣が混在する昨今、なかなか本人と面会できないといった苦労を口にする調査員も少なくありません。

調査事項は大規模調査と簡易調査で異なる

国勢調査には、10年ごとの大規模調査と、その中間年に実施される簡易調査があります。調査方法はまったく同じですが、調査事項が異なります。

戦前の大規模調査は、大正9年、昭和5年、15年に実施されています。ここでは、性別、年齢、配偶関係等の人口の基本的属性や産業、職業等の経済的属性に関する調査が行われました。一方、簡易調査は大正14年と昭和10年に実施されましたが、調査事項は、人口の基本的属性に限られたものでした。

昭和20年の国勢調査は、第二次世界大戦の混乱期にあり、実施されていません。昭和25年に再開された大規模調査は、その後、昭和35年、45年、55 年、平成2年、12年、22年、令和2年(2020年)に実施されました。

戦後の大規模調査は、結果に対する需要の高まりに応じて、調査事項を充実させた点に特色があります。調査事項は、人口の基本的属性と経済的属性に加えて、新たに住宅、人口移動、教育に関する事項が対象になりました。

簡易調査は、昭和30年、40年、50年、60年、平成7年、17年、27年に実施されました。調査事項には人口の基本的属性と経済的属性に加えて住宅に関する事項が対象になりました。

直近の大規模調査は2020年の国勢調査で実施されましたが、次の事項について調査が行われました。

<世帯員に関する事項>

  1. 氏名
  2. 男女の別
  3. 出生の年月
  4. 世帯主の続柄
  5. 配偶の関係
  6. 国籍
  7. 10月1日現在の住居における居住期間
  8. 5年前の住居の所在地
  9. 在学、卒業等教育の状況
  10. 就業状態
  11. 所属の事業所の名称及び事業の内容
  12. 仕事の種類
  13. 従業上の地位
  14. 従業地又は通学地
  15. 従業地又は通学地までの利用交通手段

簡易調査では、9と15の事項が対象外になっています。

<世帯に関する事項>

  1. 世帯の種類
  2. 世帯員の数
  3. 住居の種類
  4. 住宅の床面積
  5. 住宅の建て方

簡易調査では、4の事項が対象外になっています。

国勢調査はどのように活用されるのか

調査事項から推測できるように、国勢調査では、人口ばかりでなく、産業別・職業別の就業者数や昼間の人口と夜の人口の違いといった、住民基本台帳からは得ることができない統計情報が明らかになります。

たとえば、地域の振興計画や福祉対策を進めるための基礎資料とするには、就業の状況や通学地の状況を男女別、年齢別といった基本事項と組み合わせた複眼的視点が不可欠なのです。

それでは、この国勢調査の統計情報を具体的にどのように活用しているのか、紹介していきましょう。

選挙区の改定

選挙区画定審議会は、選挙区の改定を調査審議し、必要と認められるときは内閣総理大臣に改定案を勧告することとされています。改定案の作成に当たっては、国勢調査やこれに準ずる全国的な人口調査の結果による人口を用いることが定められているため、選挙区の改定については、国勢調査が重要な基礎データとなります。

地方自治体での活用

地方自治体が、市に「格上げ」されるための要件や、さらに指定都市、中核市、特例市となるための要件の根拠は、国勢調査による人口データが根拠となります。

また地方自治体の貴重な財源となる地方交付税の交付額の算定は、国勢調査の調査結果である「人口」、「市部人口」、「町村部人口」、「65歳以上人口」、「75歳以上人口」、「都市計画区域における人口」、「林業及び水産業の従業者数」、「世帯数」を用いることが定められています。

過疎地対策

過疎地域自立促進特別措置法による「過疎地域」として認定されるための要件として、国勢調査の結果を基にした市町村の35年間の人口減少率が一定の基準を超えた場合であることが定められています。

政党助成金

政党助成金は、各政党の議員数に応じて配分されます。この根本となる政党へ交付する政党交付金の総額を求めるために、基準日の直近において官報で公示された国勢調査の結果による確定数を用いることが定められています。

国内総生産(GDP)の算定

国内総生産(GDP)を算定するために、国勢調査の調査結果による世帯数や産業別雇用者数が推計に用いられています。 具体的には、国民経済計算の中の経済活動別就業者数や雇用者数は、国勢調査の結果による産業別、地位別の就業者数や雇用者数を基に推計されています。

各省庁の施策

各府省庁において行政課題とその対策を取りまとめるためには、現状の把握は欠かせません。現状を把握するうえで、国勢調査の結果による「人口」に関するデータは、高い頻度で利用されています。たとえば「少子化社会対策白書」では、我が国の少子化の現状を国勢調査の結果を用いて分析しています。

<h2>国勢調査を企業はどう活用するのか</h2>

国勢調査の結果は、インターネットを通じて広く国民に公開されています。現在公開されている最新のものは、前回国勢調査が実施された「平成27年国勢調査」結果です。

人口データだけでも、人口数、世帯数、事業者数の他、5歳ごとに階層を分類した男女別の年齢構成や昼間人口比率が判別できます。こうしたデータを活用することで、独自のマーケティングデータを構築することが可能になります。

このデータを基礎として「いつ・どこで・誰に向けて・何を販売するのか」といった販売戦略について方針を立てることができます。さらにはこのデータから広告の効果的な表現にも結びつけることが可能になります。

データに基づかない手あたり次第の広告は、結果として集客に結び付くことなく膨大な費用が消耗されることになります。販促を実施する商圏のリサーチに、国勢調査のデータを活用することにより、効率的な販促活動の推進が期待できます。

国勢調査ってなぜ必要:まとめ

国勢調査を実施することによって、人口ばかりでなく、産業別・職業別の就業者数や昼間の人口と夜の人口の違いといった、住民基本台帳からは得ることができない統計情報が明らかになります。

様々な階層や属性の人々が交錯する今日の社会において、まちづくりや福祉施策を有効な基として施行するためには、複層的な統計情報は不可欠です。

国政調査の統計情報は、集計後国民に広く周知されているため、研究機関だけでなく、一般企業においても、マーケティングの基礎資料としての活用が期待できます。

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