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BCPの重要ポイント!企業や従業員が被災したときの法的対策とは

近年の災害の頻発や海外での軍事衝突を踏まえて、BCP(Business Continuity Planning)の策定を急ぐ企業が増えています。

BCPとは、日本語で「事業継続計画」のことをいい、地震や台風、火災などの災害が発生した時に、企業がどのように対処し、事業をどう復旧させるか等の計画のことです。

今回は、そのBCPの概要や法的側面から見た問題点について解説していきます。

BCPの目的

BCPとは、先ほど説明したように「事業継続計画」とよばれます。

非常事態が起きた場合であっても事業を止めず継続させるための計画を各々の企業が作り、経済活動の停滞を食い止めることがBCPの主な目的です。BCPが想定しているのは自然災害が起こった場合に限られません。

例えばBCPが注目され始めたのは、2001年9月11日にアメリカで起こった同時多発テロです。これ以外にも近年で言うと2011年の東日本大震災や、2020年からの新型コロナウイルス感染拡大も、事業の継続に大きな影響を与えたため、BCPの対象となると考えられます。

これらの緊急事態に遭遇した場合に、事業の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続、早期復旧を可能にするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておくのです。

一般企業によるBCPの策定は、今のところ法律で義務づけられてはいません。

BCP策定を推奨する条例がある地方公共団体も存在しますが、罰則規定はなく努力義務にとどまっています。しかしながら、BCPを策定している企業とそうでない企業では、取引先や提携先、消費者にとって信用・信頼の程度がかなり異なりますから、昨今ではBCPを策定している企業が増えてきているのです。

BCPを策定したい企業がすべきこと

では、災害やテロ、システム障害などに備えて企業がBCPを作成する場合、どのような計画をたてれば良いのでしょうか。

①自分の企業にとって、どのようなリスクが存在するか、影響の大きいリスクは何か、あらかじめ分析しておかなくてはなりません。そのうえで、優先して継続・復旧すべき中核事業を特定しておくことが重要です。対応できる人員や施設、物資も限られてくるでしょうから、優先順位をつけておかないと混乱が生じてしまうおそれがあります。緊急時における中核事業の目標復旧時間を定めておくことも必要です。

②緊急時に提供できるサービスのレベルについて提携先や顧客とあらかじめ協議し、事業拠点や生産設備、仕入れ品調達等の代替策を用意しておくことも重要です。

③すべての従業員とあらかじめBCPについてコミュニケーションを図っておくことも必要です。有事の際に慌てないように、普段からBCPを意識し、訓練を行うのが望ましいでしょう。定期的に、BCPの内容の見直しも必要です。

BCPと安全配慮義務

企業や事業者は従業員に対して「安全配慮義務」を負うことになっています。

この「安全配慮義務」とは、従業員が安全かつ健康に労働できるようにするため、企業や事業者が負う義務のことです。労働契約法5条においても「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働できるよう、必要な配慮をするものとする」と規定されています。企業がこの安全配慮義務に違反して労働者がケガなどの損害を負った場合には、労働者は企業に対して「債務不履行責任」に基づく損害賠償請求をすることができます。

安全配慮義務違反が問題となる場合とは、例えば、職場に危険な場所や設備があるにもかかわらず安全対策を講じなかった結果、労働者がケガをした場合や、長時間労働の結果、労働者が精神疾患や身体疾患を発症した場合などがこれにあたります。

BCPは、災害やテロによる事業の継続が困難になることを避けるために策定されるものですが、社内から見ると防災から従業員を守ることもその策定目的に含まれています。そのため、BCPの策定は、企業の安全配慮義務を果たすことにもつながるのです。

BCPの策定は今のところ法律で義務づけられてはいないのですが、この「安全配慮義務」が労働契約法でしっかりと明記されていることから、企業としては安全配慮義務と密接に関連するBCPの策定はぜひ行うべきだと考えられます。

まとめ

日本は、地震や台風などの自然災害が多く、また、国際情勢の悪化に伴い、テロ等の人的な脅威の発生も予断を許さない状況にあります。

緊急事態とは突然発生するものです。その際に有効な手段を講じることができなければ、会社に打撃が生じます。特に中小企業は経営基盤の脆弱さから廃業に追い込まれるおそれもあります。また、廃業に至らずとも事業を縮小せざるを得ず、従業員を解雇しなければならない状況に追い込まれることも考えられます。事業が破綻すれば、消費者や取引先にも迷惑がかかり損害を負わせてしまうことも考えられます。

緊急時にこのような事態に追い込まれないために、BCPを普段からしっかりと策定しておくことが重要です。単なる防災対策とは異なる「事業の継続」を念頭におくBCPをしっかりと用意してある企業は、顧客からの信頼や市場関係者からの評価を得ることができ、それが企業価値の維持と向上につながり、社会的な信頼を得ることになるでしょう。

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