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2020年の農産物輸出促進法とは? 農林水産物・食品輸出本部が設置される

農産物輸出促進法

我が国の食品市場は人口の減少に伴い縮小が予想されていますが、逆に世界的に見ると食料の市場規模は2015年から2030年にかけて1.9倍にも拡大する見込みです。

そこで、農林水産物及び食料品の輸出量拡大政策こそが、我が国の食品産業の持続的な発展には欠かせないとして、「農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律」(以下、「農産物輸出促進法」と表記)が令和2年4月1日に施行されました。

そして、この「農産物輸出促進法」を強力に推進する司令塔が「農林水産物・食品輸出本部」なのです。

< 農林水産物・食品輸出の推移と見通し >

農産物輸出促進法とは

農産物輸出促進法の目的は、農林水産物及び食品の輸出を促進するために事業者と政府が一体となって取り組む体制の整備であり、次の4本柱から成っています。

  1. 農林水産物・食品輸出本部の設置
  2. 基本方針及び実行計画等
  3. 輸出を円滑化するための措置
  4. 輸出を行う事業者に対する支援措置

それでは、農産物輸出促進法の4本柱について順を追って説明して行きましょう。

1.農林水産物・食品輸出本部の設置

冒頭にも記述しましたが、農産物輸出促進法を推進する司令塔は「農林水産物・食品輸出本部」で、農林水産省の中に設置されています。

【 組織 】
農林水産物・食品輸出本部の組織は、農林水産大臣を本部長とし、本部員は関連部門の大臣が務める横断的組織となっているのが大きな特徴です。

【 事務局 】
事務局は、農林水産省の食料産業局に新設した「輸出先国規制対策課」で、事務局員は50名程度です。(2020年2月時点)

【 業務 】
農林水産物・食品輸出本部の中心となる業務は次の2点です。
・農林水産物及び食品の輸出促進に関する「基本政策」の企画立案、及び「実行計画」の作成・進捗管理

・輸出に関する関係行政機関の事務調整

2.基本方針及び実行計画等

農産物輸出促進法を推進する「基本方針」及び「実行計画等」の主要項目は、それぞれ次の通りです。

【 基本方針で定める主要項目 】

  1. 輸出先国の輸入条件について、当該輸出先国の政府機関との協議に関する事項
  2. 輸出円滑化のために必要な証明書の発行、その他手続の整備に関する基本事項
  3. 輸出を行う事業者の支援に関する基本的な事項
  4. その他輸出促進のために必要な施策
  5. 輸出促進のための、国及び都道府県等の責務

【 実行計画等で定める主要項目 】

  1. 輸出促進を重点的に行う輸出先国、並びに農林水産物・食品
  2. 輸出促進措置の内容と実施期間
  3. 輸出促進措置の担当大臣

3.輸出を円滑化するための措置

農産物輸出促進法の対象は、輸出先国の法令又は二国間合意に基づき国または地方自治体が発行する「証明書等」が必要な場合なので、それらの手続きを円滑に行うための具体的な方策を法定化しました。

(1)「輸出証明書」の発行

「輸出証明書」とは、農林水産物又は食品が輸出先国の輸入条件に適合していることを示す証明書を言います。

主務大臣又は都道府県知事等は、輸出先国から輸出証明書の発行が求められている場合、輸出を行う事業者から申請があれば「輸出証明書」を発行することができます。

具体的な証明書の種類は次のとおりです。(2020年2月時点)

(2)生産等の「適合区域」の指定

「適合区域」とは、農林水産物又は食品の生産から流通までの過程で、有害物質が混入するおそれがない等の要件に適合する区域を言います。

主務大臣又は都道府県知事等は、輸出先国が輸入条件として生産段階において有害物質の混入の恐れがない等の要件を満たしていることを求める場合、一定の要件に適合する区域を指定できます。

(3)生産等の「適合施設」の認定

「適合施設」とは、農林水産物又は食品の生産から流通までの過程で、食品衛生上の危害発生を防止するための措置が講じられている等の要件に適合する施設を言います。

主務大臣、都道府県知事等又は登録認定機関(次項で説明)は、輸出先国が輸入条件として生産段階において食品衛生上の危害の発生を防止するための措置が講じられている等の要件を満たしていることを求める場合、一定の要件に適合する施設を認定できます。

(4)登録認定機関

「登録認定機関」とは、適合施設認定のスピード化のために、主務大臣又は都道府県知事等に加えて、専門的な知見を有する民間機関でも施設認定を実施できるように制度化されたもので、登録は農林水産大臣が行います。

登録認定機関の登録を受けようとする者は主務大臣に登録の申請を行い、主務大臣は、申請者が必要な業務管理体制を有する等の要件に適合するときは、その登録を行わなければなりません。

4.輸出を行う事業者に対する支援措置(融資)

(1)輸出事業計画の認定

「輸出事業計画」とは、農林水産物又は食品の輸出の拡大を図るためこれらの生産、製造、加工又は流通の合理化、高度化その他の改善を図る事業に関する計画のことです。輸出の取組を行う事業者は「輸出事業計画」を農林水産大臣に提出し、認定を受けることができます。

2)認定された輸出事業計画に「食品等の流通の合理化及び取引の適正化に関する法律」(平成3年法律第59号)に基づく措置が含まれる場合

同法の規定を適用し、日本政策金融公庫による融資や債務保証等が受けることができます。

(3)認定された輸出事業計画に「食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措法(HACCP支援法)」(平成10年法律第59号)に基づく措置が含まれる場合

同法の規定を適用し、日本政策金融公庫による融資を受けることができます。

輸出拡大への課題

輸出拡大には「輸出品の拡大」と「輸出先国の増加」が必要ですが、輸出先国における「食品の安全性」に関する規制は逆に強化される傾向にあります。

そのため、主要な輸出先国に対しては規制緩和に向けて閣僚レベル等のハイレベルな交渉が求められています。

農林水産省食料産業局の資料によると、食品安全に関する規制については、次のような事例があります。

放射性物質規制

中国などの20か国・地域では、日本の一部地域の食品の輸入禁止又は放射性物質の検査証明を要求。(現在、規制の廃止・緩和に向けて協議中)

中国の衛生証明書(未実施)

中国向けの畜産物、茶、加工食品、アルコール飲料の輸出について、中国政府は公的証明書の提出を義務付ける意向を表明。

タイの青果物

タイ向けの青果物輸出について、昨年8月から選果・梱包施設がタイの衛生基準を満たしている旨の証明書が必要となった。

※2020年2月農林水産省食料産業局 資料「農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律の背景及び今後の実施方法について」

2020年の農産物輸出促進法とは:まとめ

人口が減少し成熟化が進む我が国で、農林水産業や食品産業の持続的な発展を実現させるには海外市場への進出が必須で、そのためには、関係省庁間の横断的な協力体制と、国や地方自治体が一体となって輸出を促進する必要があります。

そのカギを握っているのが「農産物輸出促進法」であり、司令塔の「農林水産物・食品輸出本部」なのです。

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